キャリア塾

キャリアインタビュー:村田早耶香氏

2008年4月25日

キャリアインタビュー:村田早耶香氏(1)

村田さんが共同代表をなさっている「かものはしプロジェクト」は、カンボジアでの「児童買春問題」を解決することを目的として設立されたNPO法人です。同プロジェクトがNPO法人となったのは2004年9月でしたが、村田さんがカンボジアの児童の厳しい現実を知り、「なんとかこの問題を解決したい」と活動を始めたのは、まだ大学生だった2001年のことだったそうです。(注)NPO法人とは、「特定非営利活動促進法」に基づき設立された非営利法人

まず「かものはしプロジェクト」の事業内容について教えてください

特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表 村田早耶香氏
特定非営利活動法人かものはしプロジェクト
共同代表 村田早耶香氏

かものはしプロジェクト」では、3つの事業に取り組んでいます。具体的には、コミュニティファクトリー事業、IT事業、サポーター事業の3つです。このうち、メインの事業は「コミュニティファクトリー事業」です。具体的には、農村の近くに「民芸品工場」を立ち上げ、農家の親たちを雇っています。工場では、畳の材料にもなる「イ草」を利用したカバンやランチョンマット、コースターなどの手工芸品を製造し、主に観光客向けに出荷・販売を行っています。現在、工場は2カ所(別のNGOと共同運営)にあり、50世帯から人が働きに来てるんですよ。現在3つめの工場を建設中で、操業を開始すると合計100世帯の人が工場で働くことになります。

イ草を使った手工芸品を製造し、カンボジアに来る観光客などに販売するという事業形態にされた理由は何ですか

カンボジアには、「アンコール・ワット」などの観光地に年間約100万人の観光客がやってきています。ところが、彼らが買うおみやげ品の多くが、実はベトナムやタイから輸入されたものなのですね。カンボジア国内にめぼしい産業がなく、観光客が買うものでさえ外から輸入しているという状況を変えたいと考え、地元で作られた手工芸品をおみやげとして販売することにしたのです。カンボジアの特産品としては、「シルク」もありますが、生産量が限られていますし高級品です。そこで、生産量も多く手に入りやすい「イ草」を原材料として選びました。

なるほど。では、コミュニティファクトリー事業が、なぜ児童買春の問題解決につながるのかについて説明していただけますか

はい。カンボジアの農民は主に稲作をしていますが、その多くは小さい土地しかないか、土地をほとんど持っていません。したがって、大変貧しい生活を余儀なくされており、稲作だけでは一家が食べていくことができないのです。このため、裕福な農家に小作として働いたり、都市部に出稼ぎに出て行かざるを得ないのです。そんな時に、家族の誰かが病気になると、そのため自分の子供を売らざるを得なくなるのですが、子供たちの中には、だまされて売春宿に連れて行かれ、強制的にそこで働かされる子もいます。こうして、子供たちが「児童買春」の被害者になるのです。

この問題の根本的な問題は農村に職がないことです。したがって、地元で仕事を生み出し、親などを雇用して金銭収入を得られるようにすれば、子供たちが売られてしまうことを防ぐことができるのです。現地では、1世帯の月収が日本円で3千円ほどあれば、一家5人が生活していくことができます。また、子供たちも農業の手伝いなどから解放され、学校に通うことができるようになるのです。

「かものはしプロジェクト」のアニュアルレポート(2006)を拝見すると、“今年度2008年度までに200世帯に雇用を創出し、1000人の子供たちを守ります!!”という目標がかかれていますね。

はい。今年度中、すなわち来年09年3月までにその目標を達成すべくがんばっています。カンボジアの農村では、おおむね1家庭あたり5人の子供がいます。だから、200世帯の親に仕事を創出できれば、約1000人の子供たちを守れるのです。

なるほど。現地での仕事を生み出すことが子供たちを救うことになるわけですね。では、「IT事業」について教えてください

特定非営利活動法人かものはしプロジェクト共同代表 村田早耶香氏

IT事業は、アニュアルレポートに「全事業を加速させる」とありますように、コミュニティファクトリー事業推進のための東京事務局、およびカンボジアの現地事務局の運営を支えている事業です。具体的には、「かものはしプロジェクト」の総予算のうち約7割、6600万円をIT事業が捻出しています。残りの1600万円は後ほどご説明する「サポーター事業」からです。

IT事業では具体的にどんな仕事を請けられているのですか

Webサイトの制作です。現在は、基本的に日本国内だけで仕事をこなしていますが、将来的にはカンボジアでサイトの制作の一部を受け持ってもらうため、現地でパソコン教室を開いてITスキルを持つ人材を育成しているところです。日本と比較して、カンボジアの人件費は約10分の1というコスト面の強みがあるからです。ただ、人材育成については、基礎的な学力の問題や、ネット接続環境の制約もあり、農村の人々ではなく、長引く内戦の結果発生した67万人の孤児の中から、学ぶ意欲のある子供たちを対象にしています。

IT事業が資金源の柱になっているのですね。アニュアルレポートの損益計算書を拝見すると、06年のIT事業は大幅増収になっています

当初は、来た仕事は何でも受けるという姿勢でやっていたのですが、Webの制作、中でも「ページ制作」に特化し、人員を拡充して体制を整えた結果、大きく売り上げを伸ばすことができました。現在、取引先は約40社です。また、今年度(07年度)も増収の見込みです。

IT事業のおかげで「かものはしプロジェクト」の展開がまさに加速しているんですね。では、3つ目の「サポーター事業」とはどのような事業でしょうか

1口千円(月当たり)からカンボジアの子供たちを支援してくださる「サポーター会員」を募集する事業です。現在サポーター会員は700人ほど。この会員数をさらに伸ばしていくために講演会など広報的な活動を行っています。なお、当プロジェクトを株式会社でいう「株主」のように支えてくださる正会員の方は70人ほどいらっしゃいますが、こちらは運営にも深く関与していただく必要があるため、広く募集しているわけではありません。

サポーター事業は、運営資金を得ると同時に、「かものはしプロジェクト」に対する理解者を増やしていくという意味合いもあるようですね。ところで、当プロジェクトは、現在何人くらいでやってらっしゃるんですか

日本は15人、カンボジアは15人です。カンボジアは、日本人の駐在員が2人、残りは現地採用のカンボジア人です。日本の15人のうち11人はIT事業を担当しています。

既にそれだけの陣容で取り組んでいるのですね。ところで、同プロジェクトの立上げは共同代表の村田さん、青木さん、本木さんの3人だったとお聞きしていますが、現在3人の役割分担はどのようにされているんですか

本木が、コミュニティファクトリー事業とサポーター事業の戦略立案を担当しています。また、彼は1年のうち3分の2はカンボジア現地で指揮を取っています。青木はIT事業を統轄しており、私は広報担当です。具体的には、支援者の方に活動状況を報告したり、前述したように講演活動などを通じて支援者を広げる活動を行っています。

・・・次回へ続く

(聞き手:松尾順)