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川辺川ダム:治水と環境共存は困難 有識者会議8委員が意見 /熊本

8月15日17時1分配信 毎日新聞


 蒲島郁夫知事が川辺川ダム建設の是非を判断するために設けられた有識者会議は「治水と環境の共存」という壁に突き当たり、最終会合を前にした14日の会合で意見の一本化を断念した。ただ、既存の論点や意見にとらわれず、幅広い観点からダムの利点と欠点を浮き彫りにし、金本良嗣座長は「治水と環境のトレードオフ(一方を追求すると他方が犠牲になる)関係は明確にできた。知事が判断するための新たな材料は提示できたと思う」と話した。【高橋克哉】
 会合では、報告書に盛り込む「専門的見地からの知見」として初めて8委員全員がダム建設に対する意見を表明した。
 池田駿介委員(河川工学)は「地形的特徴から、川辺川に何らかの治水施設を設けることには合理性がある」と建設推進の立場を示した。
 一方、佐藤洋平委員(地域環境工学)は「これからは自然を改変することで洪水から街を守るのではなく、洪水に適応できるような都市をつくることが重要だ」。鷲谷いづみ委員(保全生態学)は「ダムは動植物の生態に影響を与える。ダムのない川の価値は高い」と反対意見を述べた。
 金本良嗣座長(公共経済学)は賛否には言及せず「人口が大都市へ集中する中、中小都市はどのような特色を出していくかが重要。治水上、正しいかどうかは別として『ダムのない川』はブランド価値がある」と述べた。
 鬼頭昭雄委員(気象学)は「地球温暖化で局地的な大雨が増えることは確実。より安全性の高い治水対策が必要だが、ダムを造れば豪雨による土砂の堆積も多くなる」と中立の姿勢を示した。
 鈴木和夫(森林生態学)▽鈴木雅一(森林水文学)▽森田朗(行政学、座長代理)の3委員は、建設の是非は明言せず「地域」の視点から意見を述べた。
 鈴木和委員は「成長までに時間がかかる森林の多面的機能を評価するのは難しいが、地域が存在しなければ森林は保全できない。将来、地域をどうするかという視点からの判断が必要だ」と語った。
 鈴木雅委員は「ダムはない方がいいが、治水の安全度は下がる。地域がどこまで洪水の危険を許容できるのかが、ダム建設を決める重要な要素」と話した。
 森田座長代理は「五木村は消滅に向かっている。地域共同体を維持するために、現時点で何らかの決定をしなければならない」と、警鐘を鳴らした。
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 ◇報告書に盛り込まれる有識者会議の意見要旨(たたき台)
 【治水の観点】
 ▽ひんぱんに水害に遭っており、早急な治水対策が必要
 ▽地球温暖化による気候変動で想定より多い雨が降る可能性があり、より高い治水安全度が重要
 ▽堤防かさ上げ、川幅の拡幅、河床掘削は課題が大きい
 ▽ダムなどの洪水調整施設は、これまで挙げた対策の中で最大の流量を処理できる
 【環境の観点】
 ▽ダムで河川のシステムは大きく変化する
 ▽ダムのような構造物はできる限り避けた方が望ましいが、建設せざるを得ない場合、環境への影響を軽減する必要がある
 【地域づくりの観点】
 ▽球磨川の自然はプラス材料だが、洪水で生命・財産の危機に見舞われることは大きなマイナス
 ▽定住人口確保や交流人口増加のため、地域の魅力を上げるべきだ
 ▽安全・安心な地域社会を作るため治水対策を優先課題に位置づけるべきだ
 【まとめ】
 ▽ダムなどの治水対策に一定の理解を示すが、現行の川辺川ダム計画を是認する意味ではない
 ▽現行のダム計画には、環境に対する影響について再検討すべき点、環境的な考え方を取り入れて工夫すべき点がある。地球温暖化や、利水・発電の撤退といった状況変化を踏まえた見直しが必要
 ▽ダムを建設する場合(1)環境に与える影響の回避・軽減(2)流域全体で治水と環境の両立の模索(3)事業の費用対効果の検証(4)(洪水時の)避難警戒体制との組み合わせなど総合的な治水システムの構築――を検討すべきだ

8月15日朝刊

最終更新:8月15日17時1分




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2008年8月17日 11時00分発表

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