飲食店でのトラブルで逮捕された労働者に対し、警察による暴行などの人権侵害があったとして、13日夜から始まった西成警察署への抗議行動が引き金となり、騒動となった。3日間に渡ったこの騒動では投石もあり、出動した機動隊は放水で対抗するなどした。
西成警察署前に集まった群衆(西成区で)。
まるで市街戦。ここは日本?――。
大阪市西成区の釜ヶ崎(あいりん)地域で13日から連続3日間、警察と地元労働者らが対立した。特に15日は日曜のせいか、夕方から労働者や付近の簡易宿泊所に泊まる人、地域外から来たと思われる若者ら数百人が西成警察署の前に続々と集まり、一部が機動隊ともみ合いを繰り返した。一時は投石もあるなど市街戦の様相も呈した。
発端は12日午後のトラブルだった。同地域で労働者や野宿者の支援をしている釜ヶ崎地域合同労働組合が配布したビラによると、12日午後2時ごろ、同区内のお好み焼き店で客の労働者が店員の対応に苦情を言ったところ、店側が「営業妨害」だと警察に通報、駆けつけた警察官に西成警察署に連れて行かれたという。
その後この労働者は、同署内で警察官4人に顔を殴られたり、ひもで首をしめられたり足蹴りにされたという。さらにその場で「生活保護を打ち切ったろか。今後そのお好み焼き店には近づかない、と始末書書いたら打ち切らん」と言われ、始末書を書かされたとしている。西成警察署は「取り調べの際に暴行を加えた事実はない」(朝日新聞6月14日付)と暴行については否定しているようだ。
同労働組合はこうした警察の態度に抗議するため13日夜から同署前でマイクを使って謝罪を求めて抗議しはじめた。そして警備する大阪府警の機動隊と小競り合いになり、これまで十数人が逮捕、けが人も十数人出た模様だ。
13、14日の2日間で14人の逮捕者が出て、この取り調べでも暴行があり、その中に16歳の少女が含まれていたとして、同労組は15日夕方からも同署前で抗議行動を起こした。同労組の代表らが「西成警察署長はあやまれ、子どもをつかまえてどうする。西成警察署の暴力体質を改めよ」などとマイクで訴えた。
機動隊とにらみ合いも(同)。
抗議が始まって30分ほど経過した時点で、待機していた機動隊員数百人が抗議で集まった群集に迫っていった。群衆は酒のコップや、投石をして激しく応戦。辺りは騒然となり、機動隊員が持つ盾にコップや石が当たる音が響き、市街戦のようになった。機動隊側が放水を始めると群衆の輪がぱっと散らばり、追いかけてくる機動隊員から逃れようと一斉に走り出す光景も見られた。
放水車のライトが異様に光っていた(同)。
釜ヶ崎では1990年に同署の警察官が暴力団から賄賂を受け取っていたことが発覚、労働者や住民が5日間にわたって機動隊と衝突した大規模な騒動があったが、それ以来の激しい衝突となった。この時にはコンビニ店での略奪、車への放火などが相次ぎ、抗議行動から大きな騒動に発展している。
集まった労働者からは「仕事がないから皆が集まるんや」「機動隊の費用は結局、税金で払われるのと違うか」など、うっ積した不満の声も聞かれた。
1つのトラブルがこうした騒動に発展する背景まで考慮しなければ、同じことが繰り返されるのではないだろうか。一方で「これは釜ヶ崎の行事みたいなもんや」などと突き放したような態度で様子を見守る人たちもいて、地域の複雑な事情が垣間見えた。
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