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ソウル中央地裁でポルノビデオがブーム!?

 ソウル中央地裁(ソウル市瑞草区瑞草洞)で今、場違いな「ポルノビデオ・ブーム」が巻き起こっている。

 裁判で提出された証拠物を分析するために設けられた、ソウル中央地裁の映像分析室では最近、1週間に1回ほどポルノビデオが上映される。「観客」は裁判官や検事、弁護士たちだ。

 厳粛であるべき裁判所で、なぜこのようなことが起こっているのだろうか。

 今年3月以来、大法院(日本の最高裁判所に相当)が、「わいせつ物頒布罪」で有罪とした下級審の判決を破棄し無罪とする判決を出し、その際に「実物を直接見ずに判断すべきではない」と注文したためだ。

 これまで裁判所は、検察が提出したビデオの静止画像を見たり、説明文を読むだけで「わいせつ物」であるか否かを判断してきた。

 このため、「わいせつ物頒布事件」を担当する裁判官たちは、映像分析室に集まり、数百本のポルノビデオのうち、最も過激な場面だけを選んで見ることで、「わいせつ性」の有無を判断しているのだ。

 今年3月以降、6件のわいせつ物頒布事件を処理してきたチェ・ジョンニョル裁判長は「女性の裁判官や弁護士たちと一緒にポルノビデオを見るのはまるで“苦役”だが、こうした“わいせつ物の検証”は避けて通れなくなっているのが時代のすう勢だ」と話している。

 これまで裁判所は、「正常な性的羞恥(しゅうち)心を害し、善良な性的・道徳的概念に反する」という抽象的な言葉で「わいせつ性」の有無を判断してきた。

 だが、大法院は今年3月、「成人向けの鑑賞物とわいせつ物は明確に区分すべきであり、“人間としての尊厳”を著しく冒すものでなければ、わいせつ物と見なすことはできない」として、下級審の判決を破棄した。韓国の「わいせつ物」に関する判断の基準は、依然として大法院の判例を根拠としている。3月以降に出された判決においても、最も重要な基準は「人間の尊厳性と価値」を冒しているか否かというものだ。

 児童や未成年者を対象にした性行為や、暴力を伴うサディスティックな性行為などを扱ったものは、当然「わいせつ物」に該当する。また、性器など特定の部分を露出させたものも「わいせつ物」だ。だが、性器などが瞬間的に露出した場合でも、それが意図的、直接的なものでなければ、「わいせつ物」には該当しない。また、実際に暴力行為が行われていなければ、サディスティックな性的暴力のための道具が登場したという理由だけで「わいせつ物」と断定することはできない。

 わいせつ物の基準に関し、現在も激しい論争が続いている米国では、合衆国最高裁判所のポーター・スチュアート判事による、やや突飛とも言える異論が現在に至るまで支持されている。それは「I know it when I see it(見れば分かる)」というもので、「“わいせつ物”について定義することはできないが、見れば分かる」という意味だ。

リュ・ジョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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