北京五輪はきょう中日を迎える。前半戦は競泳、柔道、体操などで日本選手がメダルを獲得し、列島が喜びに沸いた。あすからの後半戦も有望競技がたくさんある。猛暑を吹き飛ばす活躍を期待したい。
日本選手の中で、前半戦の主役は何といっても競泳の北島康介選手だろう。平泳ぎの百、二百メートルで二大会連続の二冠を達成した。五輪史上初の快挙だ。
前回のアテネ大会で頂点を極めたが、その後は夢を実現した脱力感に襲われたという。試合で勝てなくなり、脚の肉離れなどけがにも泣いた。
復活をかけた北京五輪の圧巻は、最初の決勝となった百メートルのレースだった。強力なライバルや急成長してきた新鋭を振り切り、世界新記録で優勝した。四年に一度の大舞台で連覇を果たした集中力、精神力は見事というほかない。
レース後のインタビューではタオルで顔を覆い、しばらく声が出なかった。アテネでは「チョー気持ちいい」と伸びやかに喜びを表現したが、今回は震える声で「うれしいです」と涙をぬぐった。苦難を乗り越えた勝者の姿は、日本中に大きな感動を与えた。
自信を深めて臨んだ二百メートルは、二位以下を大きく引き離し圧勝した。王者の風格を感じさせ、世界に実力を見せつけて痛快でもあった。
前半戦では北島選手と同様、五輪二連覇組の活躍が目立った。柔道の内柴正人、谷本歩実選手らである。北島選手のように挫折をばねに心技体とも充実させた。手にした栄誉に拍手を送りたい。
体操の男子個人総合では十九歳の内村航平選手が二位に入り、日本選手として二十四年ぶりにメダルを獲得した。今後の飛躍が楽しみだ。フェンシングでは太田雄貴選手も二位と大健闘した。この競技では日本選手で初のメダリストとなり、喜びはひとしおだろう。
朗報の一方、不満足な内容で会場を後にした選手が少なくない。特に柔道では初戦敗退が相次いだ。抜本的な立て直し策が急務のようだ。
後半戦の注目の一つは、あす行われる女子マラソンである。五輪二連覇を狙う野口みずき選手が、けがのため欠場するのは残念でならない。ベテランの土佐礼子、郷土勢の中村友梨香の代表二選手はプレッシャーを感じず、平常心で走ってほしい。
野球の「星野ジャパン」、卓球、ソフトボールなどでもメダルの期待がかかる。前半戦を上回る熱い感動をもたらしてもらいたい。
東証一部上場の不動産会社アーバンコーポレイション(本社・広島市)が東京地裁に民事再生手続きの開始を申し立て、受理された。負債総額は二千五百五十八億円で、帝国データバンクによれば上場企業では今年最大の経営破たんである。
アーバンコーポレイションはオフィスビルや商業施設を開発したり再生し、外資系ファンドなどに売却する不動産流動化事業やマンション事業が主力だった。不動産市況の低迷で金融機関の融資姿勢が厳格化し、資金繰りに行き詰まったことが直接の破たん原因とされる。
不動産業界は都市圏を中心に日本のビルや土地に積極投資する外資系ファンドに支えられ、最近まで活況を呈していた。アーバンコーポレイションを含む各社がこの波に乗り、不動産流動化事業を進めてきた。
だが、米サブプライム住宅ローン問題の影響で状況が変わった。今年に入り、外資が急激に物件を買わなくなったという。環境変化を受け国内金融機関も不動産会社への融資を絞り始めた。このため倒産が相次いでおり、上場企業に限ってもアーバンコーポレイションで今年に入って五件目になる。
アーバンコーポレイションは広島大本部跡地(広島市中区)の整備で広島市と協定を結んでおり、市は対応に追われている。有力企業の破たんは、地域に与える影響も大きい。
首都圏では資金繰りに追われる不動産会社による物件の投げ売りも始まっているようだ。不動産のミニバブルがはじけつつあるのかもしれない。
資金繰りで行き詰まる例が多いことから過度の貸し渋りを防ぐ対策なども求められようが、不動産市場の風向きが変わったことに関係者は警戒を強めなければなるまい。
(2008年8月16日掲載)