汗をかきながら、ズワイガニを食べた。夏休みに当地を訪れた知人のお相伴である 冬の美味である、といくら言い聞かせても、「北陸の味=カニ」というイメージができあがっていて、首を縦に振らない。やむなく、ロシアから運ばれたであろうカニを口にしたのだが、これが意外といけた。「旅の人」の無知をたしなめるつもりが、当地ではカニは冬に食べるものという思い込みが少し揺らいだ 秋の味覚を代表するサンマが、出回っている。もう型が大きく、脂もそこそこのっている。聞けば、北海道や三陸沖で近年は季節外れの豊漁が続いている。暑さの中で食するズワイやサンマ。季節のない食卓である 名残、旬、はしりを組み合わせるのが日本料理の基本、と聞いた。目と舌で季節を味わい、季節の移ろいを楽しむ。だが、いまは、季節外れの味に慣らされかねない私たちの舌である 今年はサンマの豊漁が期待されるが、値崩れの不安もせり出す。燃料価格高騰のパンチを受けて、あすは一斉休漁も予定されている。海の恵みも、素直には喜べない。ほろ苦さの増す夏のサンマである。
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