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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
「テレビゲームと子供たち ―社会心理学の立場から―」取材ノート 3of3 【今後の課題】
■■ 今後の課題 ■■
◆ゲームの影響はますます強まる
たとえ今は影響がないとしても、今後技術が高まっていくと、どうなるか分からない。このため、「いい影響」「悪い影響」両面についての取り組みが重要に。
・有効利用できる、いいゲームを作る
・悪影響への対応
・対応しておくことが無難
・悪影響がないとは言えない
・法的規制はあくまで最後の手段であり、可能な限り回避すべき
法的規制の導入は、言論の自由を侵すものというだけでなく、メディアリテラシー教育(より狭く言えばゲームリテラシー教育)などの努力を放棄し、法規制の強化に任せようとする思考停止の傾向を生む。
ビデオゲームが強力になるほど規制強化が進む、ということ。
◆米国の法規制について
米国では、たとえばワシントン州シアトルで法的規制が成立している。これは「警官を殺すような場面のあるゲームは17歳未満に売ってはならない」という法律。ただし、これは業界団体などが憲法違反として提訴しており係争中。
これは、アメリカのMAVIA(Mothers Against Violonce In America /「アメリカにおける暴力に反対する母親たち」)というNPO団体がはたらきかけて成立したもの。MAVIAは「ゲームは今こんなにひどいですよ」ということを訴えるために、Grand Theft Autoやポスタル2の「残虐」シーンを集めたビデオを作成して、ビデオゲームへの規制強化をはたらきかけた。
◆日本について
メディア規制をビデオゲーム限定でやられると、何らかのセンセーショナルな事件の後などには、もしかすると法案が通るかもしれない。いったん法律ができると、対象がどんどん拡大されるおそれ。(MAVIAも、警察官限定で、「通りやすいところから」始めて、後から広げようという戦略を採っている)
◆法規制はビデオゲーム文化の死である
・影響に関する研究とガイドラインの必要性
十把一絡げの「だめ」といった不必要な規制は誰の得にもならない。具体的にどういう要素が悪影響があるのかとかを研究してガイドラインを策定する必要がある。
・適切な自主規制のあり方
表現能力の向上が続くと、そのままではいつか法規制を受けるおそれがある。
・CEROによるレイティング
第三者機関による、ゲームの内容に応じた年齢制限を審査している。ただ、レイティングを行っても、小売りの問題が残る。
CEROのレイティングは、あくまで年齢のみでおこなわれている。米国では性表現によるものか暴力によるものか、といったことが分かる仕組み。CEROは現在のところ資金の不足で内容の方までは行っていないが、内容も入れていく方向へ。
レイティングそのものの適切性の検討が今後進められていくだろう。
・家庭に対する社会教育の振興
子供がビデオゲームをやりすぎていたら親が注意する、とか、ソフト購入時にレイティングを参考にする、とか。
個人がゲームを作ってネットで配ることができる時代になり、業界の自主規制だけでは「ゲーム」を抑えきれない。→家庭の力が必要
親から子供への指導だけでなく、子供自身が自制したり選択できるように教育する→メディアリテラシー、メディアとのつきあい方の学習
・取り組み主体の連携関係の模索
この問題は、どこかがやればいいという問題ではなく、業界や親、学校などがそれぞれ行う必要がある。
業界:自主規制できるけど、表現の自由などとの関係から、あまり強い規制をおこなえない
家庭:親は子供の教育において大きな役割をもちうるが、ワークショップやパンフレットなどに反応するのはそもそも意識の高い家庭。メディア接触に問題のある、意識の高くない家庭への啓蒙には限界がある
学校:子供全体への教育に大きな役割をもてるということで、学校でメディアリテラシー教育をしようという動きもあるが、学校はすでに教えることがいっぱいある。
→いずれも限界があり、複合的な取り組みが必要
◆ビデオゲームは今、微妙な状況にある
ビデオゲームは豊かな世界だが、法規制がおこなわれると乏しくなる。
そうなると人材が集まらず、せっかくの有効利用の道も閉ざされてしまう。
講座概要:
・ビデオゲームの影響研究の動向
・暴力と向社会性
・人間関係
・認知能力と学力
・視力
・体力と健康
・なぜビデオゲームは影響力を持つか
・今後の課題は何か
これは、東京大学ゲーム研究プロジェクトの公開講座第1回、「テレビゲームと子供たち ―社会心理学の立場から―」(講師 坂元章氏:お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 複合領域科学専攻助教授)の取材ノートをとりまとめたものである。
この記事はいずれも講座のメモであり、不正確な部分や坂元氏の意図と異なる部分などについては、すべてSlashGames伊藤の責任である。
(なお、講座の中で「テレビ」との対比が多数登場するため、坂元氏がテレビゲームと表現された部分について、混乱を避けるためビデオゲームという表現に換えている。)
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(伊藤雅俊@RBB)
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