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★ Slash Gamesは、2007年6月1日より「インサイド」になりました
「テレビゲームと子供たち ―社会心理学の立場から―」取材ノート 1of3 【ビデオゲームの影響研究の動向】
これは、東京大学ゲーム研究プロジェクトの公開講座第1回、「テレビゲームと子供たち ―社会心理学の立場から―」(講師 坂元章氏:お茶の水女子大学大学院人間文化研究科 複合領域科学専攻助教授)の取材ノートをとりまとめたものである。
通常、こういう生の素材は出さないものだが、坂元氏の講座は多様な内容を含んだものであり、さまざまな立場の人にとって、考えなければならないポイントが多数あると考えたたため掲載することとした。
この記事はいずれも講座のメモであり、不正確な部分や坂元氏の意図と異なる部分などについては、すべてSlashGames伊藤の責任である。
(なお、講座の中で「テレビ」との対比が多数登場するため、坂元氏がテレビゲームと表現された部分について、混乱を避けるためビデオゲームという表現に換えている。)
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◆今回の講座について、ゲーム研究プロジェクトから要望されたこと
1)ビデオゲームが人間、とりわけ子供たちにどのような影響を与えるのか、実験・観察に基づいた見解
2)その影響はビデオゲームのどのような要素によるものなのか
講座概要:
・ビデオゲームの影響研究の動向
・暴力と向社会性
・人間関係
・認知能力と学力
・視力
・体力と健康
・なぜビデオゲームは影響力を持つか
・今後の課題は何か
◆なぜビデオゲームは影響力を持つか
これまでビデオゲームについては従来から、直観的に語られることが多かった。直観が正しいことがあるかもしれないが、客観性を高めようという努力が必要である。(坂元先生の専門である)社会心理学の分野では、こうした対象を研究する場合、以下の3つの研究が重要となる。
・調査研究
・パネル研究
・実験室実験
調査研究は、アンケート的なもので、質問紙などを使用する。ビデオゲームのプレイ状況と性格分析の両方を調べる。「ビデオゲームをプレイする時間の長い子はほんとうに暴力的な性格を持つのか」といったことを調べる方法論。ただし、これはAとBという現象がともに出ている、ということまでは分かっても、因果関係の区別ができない。つまり、仮に「ビデオゲームをやっている人ほど暴力的である」という関係が出てきたとしても、ビデオゲームをやっているから暴力的になったのか、暴力的なひとがビデオゲームをやるようになったのか、を言うことはできない。
パネル研究は、同じ対象(人物)に同じ調査を複数回、間隔を置いて実施するというもので、因果関係による効果の分離がある程度可能。
ここまでの二つの研究方法は、対象が日常生活を送っている状態で調べる方法。
実験室実験は、被験者の人を実験室に呼んで実施するもの。たとえば50人を集めて、半分の25人に暴力的なゲームをやらせて、残る25人にはそうでないもの、たとえば当たり障りのない映画などで時間をつぶしてもらう。その後、暴力的な傾向が強まったかどうかを確認する実験を実施することで、暴力的なゲームによる影響があるかどうかを調べる、というもの。
ビデオゲームにはいろいろな要素が含まれているため、パネル研究ではどの要素がより大きな影響をもたらしているのかが分からないが、実験室実験では条件を実験者がコントロールすることができるため、細かい要素の因果関係が特定することができる。しかし、実は実験室実験では短期的な影響だけしか明らかにできず、長期的な影響は実験室実験では確認できない。
このため、パネル研究(長期的影響)と実験室実験(短期的影響)の両方を併用することが望ましい。
◆ビデオゲーム研究の現況
ビデオゲームについての研究は全般に少なく、テレビ研究と比べると大きな違いがある。ゲームが新しいメディアだからという理由もあるが、新しいメディアながらインターネットについては非常に多く行われている。
ビデオゲームについては、研究者自身があまりさわっていないから何が起こっているか分からない。
「研究が少ないので確かなことが言いにくい」というのが現在。ただし、一部は進んできているところもあり、領域によって凹凸がある。
■■ 各論 ■■
◆暴力の問題(ビデオゲームの悪影響の方の主要なもの)
「暴力的なゲームをやると暴力的な子供になり、やがては犯罪者になってしまうのではないか」という心配。ビデオゲームが暴力を学習させるということについて、その要因は以下の3つ。
1)報酬性
暴力的シーンが暴力を学習させてしまう。
テレビの暴力シーンが暴力の学習につながっているということは、研究者の間では「暴力性を高める」という認識でほぼ合意されている。(理由:暴力が賞賛される。よい解決手段であるとして表現されているため)
ただし、テレビの中の暴力は「他人の暴力」だが、ビデオゲームの中の暴力は「自分自身の行う暴力」であり、ビデオゲームにおいてはテレビより影響が強いのではないかという議論がある。立証されていない。
2)慣れ
怒りを感じる場面での選択肢はいくつもあるが、暴力をふるうことに普段から慣れていることで暴力行為への回路ができあがっていると、暴力的な行動に出やすくなる。
3)高い現実性
ビデオゲームの表現のリアリティ向上により、ビデオゲームの中と外が近くなってきている→ビデオゲーム外にビデオゲーム内で学習された「暴力」が出てきやすくなっているといわれる。
ただし、これまでテレビとの差が今まではあまり言われていなかった。ビデオゲームの表現がリアリティの面で低かったためだが、最近は状況が変わってきている。
このうち、「報酬性」と「慣れ」は、テレビにはなかった要素。
1997年ぐらいまではビデオゲームの影響を検出する研究は見られなかったが、最近の研究ほど、ビデオゲームの影響が強いという傾向が出てきている。このため、最近ではビデオゲームの影響力がある程度認められるのではないかという方向になってきている。
ただし、テレビについては細かく研究が行われており、条件による影響の違いが非常に大きいことが知られている。
・個人差(もともと持つ暴力的な性格など)
・暴力の賞賛、正当化
・行為者が魅力的に表現されている/視聴者に似ている
などが違いをもたらす。ビデオゲームでも同じ傾向はあるかもしれないが、研究は進んでいない。
First Person Shooter:視野が銃を撃つ人(Shooter)となるタイプ。実際に自分自身が攻撃をするのと似た状況になる、ということで、特に心配されている。
◆向社会性(社会の役に立つこと/pro-social)
道徳的な行動をするとか、人助けをするとかの「よい影響」の面。
テレビでは研究が進んでいる。テレビの中で道徳的なシーンに触れると、実際によい行動をとる、という傾向があり、暴力的な影響と変わらない影響力を持つ。ビデオゲームではあまり研究は進んでいないが、一部で研究されている例も。
結局、コンテンツ次第であり、暴力的か向社会的かで大きな違いが出てくることになる。ただし、ビデオゲームの90%近くには暴力的な要素を含むのに対し、向社会的シーンを含むのは30%〜40%程度と、開きが大きく、暴力的な問題についての影響が目立っている。
◆ビデオゲームと人間関係
ゲームへの没頭によって、生身の人間関係技能が育たないと言う懸念がある。
よく言われる話ではあるが、研究としては(少なくとも高校生以下での研究では)支持されない(人間関係が苦手だからゲームに没頭、というのはあるが)
ゲームによる人間関係の阻害化という悪影響があるにせよ、ゲームが円滑化する場面もある。ソフトの貸し借りや共通の話題として、あるいはゲームがうまいことによって尊敬されたりとか。(大学生については、ゲームへの没頭から人間関係が苦手に、という例も出てくる)
人間関係への影響については、インターネットに関する研究で「生身の人間関係が苦手になる」といったことがよく言われる。ただし、広く起こるものではなく、一部の人についてあてはまる。
・ネットゲーム
実際にかなり「中毒」状態になるケースもある。これまでの研究は全てスタンドアロンのビデオゲームに対するもので、人間関係については、インターネットの影響と重なって、今後新しい場面も出てくるかもしれない。
◆認知能力と学力
【娯楽による利用の影響(普通に遊ぶことによる影響)について】
・知的活動の時間を奪う
よく言われている割には、研究は少ない。ある程度は悪影響があるかもなあ、というぐらい。
・視覚的能力の向上
繰り返し示されている。最近もサイエンス誌に論文が掲載された。(メンタルローテーションとか立体物の組み合わせのイメージ能力、とか)
・「ゲーム脳」問題
すでにいろいろな批判がなされている「ゲーム脳」だが、ビデオゲームのプレイ中に前頭前野の活動が低下する、というのは10年ほど前から研究結果が出ており、これは実際あることだろうと認識。
ただし、発達に対する影響の問題として、「ゲームで前頭前野が低下する経験を繰り返すと、普段から低下したままになるのか?」という疑問。
長期的な調査研究をやらないと何とも言えない。
【教育的なビデオゲーム】
学業不振児に効果がある。また、戦略を練るようなゲームは問題解決能力を育てるのにプラスである、という議論もある。
このあたりは有望な領域で、ポテンシャルがあると思う。ただし、教育的なゲームに大ヒットがあるわけでもなく、マーケットが不明であり、「いい娯楽のゲーム」であり、かつ「いい教育ソフト」であるというものになると開発は大変。
学校の理解が必要で、学校で「効果があるなら使いましょう」ということで理解が進めば、巨大なマーケットであり、開発も進むかもしれない。
◆視力への影響
ゲームをやっていると目が悪くなる、という話について。
(医学面は専門でないが、と前置き)
企業などでの「VDT(Video Display Terminal)障害」についてはこれまで研究が進められてきている。そこではもう障害があるものとして、ガイドラインが設けられたりしている。
ゲームはVDTと同様であり、さらに長時間熱中するとなれば、いいわけはないのだ、という悪影響に肯定的な見方が一般的。
◆体力と健康
【娯楽的利用の影響】
ゲームは室内のものなので、外遊びの減少や運動不足を招く。そして、最近の体力・健康・肥満の問題が出てきている。このため、テレビや、ビデオゲーム、インターネットが子供の体力低下をもたらしているのではないか?という見方がある。
ゲームと肥満は同時期に出てきてはいるが、食とかもあるから因果関係は不明。しかも実証は乏しい。「もっともらしい」という程度の認識。
【健康増進のためのゲーム利用】
・健康の増進(エアロバイク+風景表示、などで運動を楽しく行えるようにする)や、リハビリテーション(目と手の連動の回復、とか)への利用。
・児童相談
カウンセラーはゲームは必須技能とまでいわれるほど。
話題として。あるいは二人で一緒にプレイすることでゲームを挟んでのコミュニケーションがとれる。あまりに効果的で、相談員のカウンセリング技術の低下をおそれてゲームの利用を控えようという呼びかけがなされるほど効果的。
・没入によるストレス回避
病気などで不安や恐怖心を抱えた子供に、ビデオゲームをプレイさせることで、ゲームに没入することでそうした不安などを忘れさせることができる。これによって状況を良くできる。
このような利用法もある。
(続く)
講座概要:
・ビデオゲームの影響研究の動向
・暴力と向社会性
・人間関係
・認知能力と学力
・視力
・体力と健康
・なぜビデオゲームは影響力を持つか(次ページ)
・今後の課題は何か
(伊藤雅俊@RBB)
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