戦中戦後の食事を再現した終戦定食。提供するのは今年で31回目。味付けは塩だけなので、薄味だ=宮崎市の宮交シティ
千切り大根めし、いもがら入りだご塩汁、おから、サツマイモのつるのいため物、ところてん――の5品。
戦中戦後の食事を再現した「終戦定食」(300円)が、宮崎市の宮交シティの従業員食堂で一般向けに出された。同社が社員向けに提供を始めてから30年続く恒例の行事。この日用意した約100食は、2時間ほどで完売した。
味付けは塩だけ。記者も実際に食べてみた。サツマイモのつるのいため物やおから、ところてんはどれも素朴な薄味。おかずには物足りない感じがする。大根めしは、麦ご飯にサツマイモなどが入っていて、はしが進んだ。濃い味つけの食事に慣れているせいか、素朴な味の定食は新鮮でおいしいとも感じた。ただ、毎日だとすぐに飽きてしまいそう。
「ずっと前から食べたかった」と話すのは、妻(65)と娘(38)、孫(1)を伴って来た河辺睦雄さん(69)。だご塩汁を口にして、「なつかしい味」と一言。当時、川南町にいたころの食事を思いだし、「食べられれば幸せだった」。
同町には空挺(くうてい)落下傘部隊がいたため空襲が激しく、学校にもほとんど通えなかったという。「世界中では今も戦争やテロなどが起き、心が痛む」と話した。
終戦定食は「1年に1回でも戦争について考えるきっかけになれば」と、同社の社員向けに78年に始めた企画。88年には一般客にも提供するようになった。企画課の長友淳一課長代理は「特に若い人に食べてほしい。食を通じて、平和の喜びやありがたさをかみしめて」(高玉歩)