2008年8月2日
ジャパンオープン男子100メートル自由形決勝で笑顔を見せる内田翔=矢木隆晴撮影
ヴィトンの財布に12円しかなかった。パチンコに逃げ道を求めた自分に気づき、涙があふれた。日本代表を逃した07年春。大学からの帰り道だった。
「水泳もパチンコも両方やめたかった」
男子自由形のホープは、気づいたら父に電話していた。つらい時に思い浮かんだのは、家族の顔だった。
群馬の実家に戻った。6日目、子供のころから好きだった「ウルトラマンタロウ」のビデオを見ていたら、両親に本音を聞かれた。「本当は水泳をやめたくない。家族の喜ぶ顔を見たい」と答えた。千葉の所属クラブをやめ、高校時代まで在籍していた群馬SSで出直しを決めた。
法大には新幹線で通い、教室では最前列に座った。そのまじめさを、水泳でも取り戻した。授業が早く終わる日は同居の祖母とゆっくり過ごし、精神的な余裕も持てるようになった。今春の北京五輪代表選考会で800メートルリレーのメンバーの座を勝ち取った。
今も、両親から携帯メールや電話で叱咤激励(しったげきれい)される。家族の思いがうれしい。(由利英明) *
うちだ・しょう 87年9月生まれ。群馬県出身。法大3年、群馬SS所属。05年世界選手権に高校生で唯一出場。五輪では男子800メートルリレーと200メートル自由形に出場予定。182センチ、83キロ。