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未来育て:第2部・専業主婦と少子化/3 期待と失望繰り返す不妊治療…

 ◇期待と失望繰り返す不妊治療。「2人目欲しいけど…」

 ◇心身・費用、大きな負担--地域間に格差も

 兵庫県の雅美さん(42)=仮名=は、会社員の夫(45)、小1の長男(6)と3人暮らし。30歳で結婚。当時住んでいた埼玉県の病院で大きな子宮筋腫が見つかった。「妊娠は無理」。医師の宣告に泣き伏した。

 だが、念のため東京都内の病院に行くと「妊娠できます」。手術で筋腫をとり、仕事をやめ不妊治療に専念した。最初の妊娠は6カ月で流産。長男が生まれた時には、もう36歳になっていた。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査(05年)で、不妊を心配したことのある夫婦は25・8%。検査や治療を受けた夫婦は全体の13・4%に上る。

 長男が生まれて4カ月後、夫の転勤で兵庫に。知人が一人もいない初めての土地。1年たち「長男にきょうだいを」と再度不妊治療を考えたが、近くに大きな病院はない。インターネットで調べても信頼できる情報が少ない。「埼玉の経験から、どんな先生か不安で踏み出せなかった」

 通院時に長男を預けられる場所も百貨店の託児コーナーくらいで1時間が限度。夫は仕事が忙しく、平日に休みを取れなかった。

 迷いと焦りで1年が過ぎたころ、埼玉の実家で母(77)が倒れた。介護する父(77)を手伝うため、息子を連れ埼玉と兵庫を往復する日々に。子育てと介護で心身とも疲れ、気がつくと40代。2人目はあきらめた。

    *

 横浜市の由加さん(32)=仮名=は妊娠7カ月。2年間の不妊治療の末に授かった。光学メーカー系子会社の正社員で残業が多く、生理不順だった。家事を十分できないこともストレスで退社。週1、2回派遣で働きつつ不妊治療を始めた。

 20代は仕事でも一人前になる時期。子どものいる女性がキャリアを生かせない職場に異動するのを見て出産をためらう気持ちも分かる。出産に「年齢の限界」があることなど意識しなかった。通院してみて「こんなに多くの人が不妊治療を受けている。特別なことじゃないんだ」と驚いた。

 国は04年度から、不妊治療への助成を始めた。体外受精や顕微授精など高度治療に対し、1回10万円まで補助する。06年度に補助を受けたのは、3万1048人。

 由加さんが受けたのは超音波検査で排卵日を予測するタイミング法という治療で、助成対象外。検査や排卵誘発剤、漢方薬など毎回数千円から2万円程度の費用は全額自己負担だ。助成対象を広げてほしいと思うが、期待と失望を繰り返す治療の負担は費用だけでなく心身面も大きい。

 子どもが小学校に上がったら再就職するつもりだ。習い事をさせる経済的ゆとりが欲しいし、自分のためにも仕事がしたい。2人目は欲しいが、まだ決めていない。

    *

 出産事情に詳しいジャーナリストの河合蘭さんは「2人目に女性の関心は高いが、専業主婦でも、出産前の働き方や1人目の育児で心身とも消耗している人が多い」と話す。東京都狛江市で相談、指導に当たる放生(ほうじょう)勲医師は「治療の成功率が意外に低いことや、加齢で妊娠しにくくなることを理解していない女性が多い」と指摘し、聖路加看護大の森明子教授(母性看護・助産学)は「不妊治療は地域や医療機関の格差が大きい。小規模診療所を含めた情報ネットワークがもっと必要」と取り組みを求める。【大和田香織】=次回は23日掲載

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 ■読者から

 ◇集う場が必要

 長男7歳、長女4歳の母です。長男が生まれた時、区の乳児健診で紹介してもらった民間サークルに入りました。実家も遠く、主人の両親も自営で頼れない中、とても励まされました。それが突然休会になり、思い切ってママ友とサークルを作りました。自宅で歌や絵本朗読、簡単な製作などをしています。

 子育てまっただ中のママは、行政主催の立派な勉強会や講演会ではなく、たわいないおしゃべりができる「場」が必要だと自分の体験から思います。子どもたちが安心して遊べる「場」も必要です。=大阪市、金田留美子さん(36)

 ◇退職し5人出産

 9、7、5、3、1歳の5児の母です。第1子妊娠を機に退職し、専業主婦になりました。最初の子育ての時は、専業主婦の新米ママ同士で「子どもを保育所に預けて働いている人の方が楽なんでしょうね」という話をよくしました。しかし、正社員として働いているママさんに「複数の女性社員が同時期に産休を取らないよう、子どもを作る順番がある」と聞きました。退職してよかったです。=さいたま市、高橋鈴子さん(34)

毎日新聞 2008年8月16日 東京朝刊

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