【第34回】 2008年06月11日
1箱1000円たばこは一気に実現すべきだ
しかし、それでもたばこ税を大幅に増税することは、税収を稼ぐことばかりでなく、たばこの消費量を抑制し、何よりも喫煙者本人の健康のためになるし、火事の原因を減らすことと共に、環境のためでもある。喫煙がもたらす外部不経済性に対して技術的に適正な価格付けが難しいことと、喫煙に依存症的な習慣性があることを思うと、ガソリンに対する税金が環境税として正当化できること以上に、たばこへの増税は妥当な課税だと思う。
そもそも笹川氏も指摘するように、日本のたばこの価格は国際的に見ても安すぎる。産経新聞のデータによると、英国では1箱なんと1297円もする。フランスで782円、米国で759円、ドイツでも652円するという。これらに対して、日本はマイルドセブンで300円。為替レートの問題もあろうが、日本のたばこは、先進国の中では現在突出して安い。
同じ記事では、京都大学の依田高典教授(応用経済学)が率いる研究グループが「たばこを1000円にすれば9割が禁煙を考える」との研究結果をまとめたことが伝えられている。むろん、禁煙を考えるのと、禁煙を実行できるか否かはまったく別の話だ。だが、喫煙が体に悪く依存症的な習慣性を持つことを考えると、繰り返すが、たばこ税の大幅増税はそう筋の悪い話ではあるまい。
1000円でも喫煙する人は
高額納税者として尊敬される?
しかし、せっかくの筋のいいこの話なのだが、政治家の言動を見ると、怪しい議論や心配な動きがある。
驚いたのは、産経新聞の記事で紹介されていた中川秀直自民党元幹事長の発言だ。
中川氏は「禁煙推進議員連盟」(会長・綿貫民輔国民新党代表)のメンバーではないらしいが、「たばこが1000円になっても喫煙する人は高額納税者として尊敬されるぞ」と言っていて、たばこ大幅増税に賛成らしい。
しかし、景気拡大での税増収による財政改革を狙う“上げ潮”派を代表する彼の持論はとにかく歳出斬りこみが優先で、特別会計には埋蔵金が眠っているから、直ちに増税は必要ないとのスタンスではなかったか。それなのに、今ここで税収を理由にたばこ増税に諸手をあげて賛成するのでは、日頃の主張の説得力が失われる。「上げ潮なんて言っていても、やっぱり税収は心配らしいよ」と陰で言われかねないのではないか。
付け加えるなら、内容がたばこ税であっても、増税は増税だから、マクロ的には景気の足を引っ張る方向に作用するとは言える。
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山崎 元
(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、明治生命、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、一橋大学大学院非常勤講師、マイベンチマーク代表取締役。
旬のニュースをマクロからミクロまで、マルチな視点で山崎元氏が解説。経済・金融は言うに及ばず、世相・社会問題・事件まで、話題のネタを取り上げます。