「これまでの結果を白紙に戻すものだ」と外務省の斎木局長は拉致被害者家族に伝えた。日朝実務者協議の内容を正確に言えば「再調査」ではなくて「白紙状態からのやり直し」であると 協議の行われた12日は、30年前のその日、佐渡で曽我ひとみ・ミヨシさん母娘が、鹿児島では増元るみ子・市川修一さんが拉致された日である。家族にとって思い出すのも辛い事件から30年目の日に開かれた協議だったのである 遠く離れた佐渡と鹿児島で同じ日に事件が起きたのは偶然ではない。国家犯罪である拉致の構造を、あらためて思った人もいたはずだ。この2件4人のうち帰国できたのは曽我ひとみさん1人である 北朝鮮側が示しているのは増元・市川さん死亡、ミヨシさんは不明との説明である。今回の「やり直し調査」がまともなものなら、増元さんら3人の消息は正確に伝えられるべきであり、家族会が「事態は動き出した」とする理由もそこにあろう ただ、気になるのは「結果は今秋まで」とのあいまい表現である。秋の終わりとはいつのことか。見解の相違を持ち出しかねない相手である。
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