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医師が身近に―広がる安心感 大竹の阿多田島常駐1カ月 '08/8/13

 大竹市の阿多田島に二十五年ぶりに医師が常駐して一カ月余りになった。船と車を乗り継ぎ、市中心部に通院していた住民の労力や経済的負担は軽減。高齢者たちは、地域の診療体制が整った安心感は何ものにも替えがたいと喜んでいる。

 市が一千万円かけてリハビリ室やエックス線室を新設した阿多田診療所で、京都市の病院長だった林重三医師(64)が診察を始めたのは七月七日。一カ月間の受診者は延べ二百三人で、市の見込みのほぼ二倍だ。島の人口は約三百二十人、高齢化率は35%である。

 「以前は消毒だけでも船で病院に行かなければならなかった」。七十五歳の女性は手の指を縫うけがをした時のことを振り返る。対岸の大竹市小方港まで約十四キロ。一九八三年に診療所の常勤医師が不在になり、近年は国立病院機構広島西医療センターの医師が週一回巡回診療していた。

 住民は基本的にフェリーで小方港に渡り、そこからは車で病院に通っていた。自家用車でなくタクシーに乗ると一回の診療につき、交通費は三千円程度かかってしまうという。

 経済的問題もさることながら、自治会の本田幸男会長(66)は「ぐっすり眠れるようになったという人もいる」と安心感が得られたことが大きいと説く。島外の病院へ急患を運ぶ自治会の救急船は林医師の着任以降、五回出航している。いずれも、まず林医師が応急処置し、混乱もなく搬送できたという。

 一方の林医師は「島の人は塩分の高い食事や酒を好む人が多い」と分析、治療に加えて今後は生活習慣病予防に力を入れていく考えだ。(川崎崇史)

【写真説明】診察後に阿多田島の住民と談笑する林医師




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