県立3病院で、患者から回収できない医療費の未収金が年々膨らみ、07年度決算(速報値)で2億円を超えたことが分かった。滞納理由は86%が生活困窮で、医療費の自己負担割合の増加などが背景にあるとみられる。国民健康保険料の長期滞納で医療費の全額負担を求められる無保険者も増えている。経営改善に取り組む県病院局は効率的な回収のため、回収業務の民間委託の検討を始めた。
病院局によると、07年度の未収金は2億2423万円(前年比2668万円増)で、約7割が過年度からの累積。03年度(1億2454万円)から5年間で1億円近く増えた。内訳は▽中央1億5303万▽友部5429万▽こども1691万円--となっている。
病院局の調べでは、無保険者が民間病院で診療を断られた末に公立の「看板」を頼りに受診し、結果的に滞納する例も増えているという。他には死亡した患者の遺族が相続を放棄したり、救急で入院した外国人が病院から失跡したケースもある。
県は1カ月を超えた滞納者には文書と電話で督促し、2カ月を越えると戸別訪問を始める。高額な場合は分割払いの約束を交わす。最終手段である裁判所への申し立てはこれまで行われた例はないが、所在不明の滞納者も少なくない。
同局は07年度、職員数人で分担して前年度実績の2倍以上に当たる686戸を訪問。うち9割近くが分納などで回収の見込みは立った。民間への業務委託は効率性と現場の負担軽減を考えた措置だ。
しかし、事態は単純ではなさそうだ。中央病院で数十万円の医療費の滞納を続けていた無職の30代男性が督促に応じた。不審に思った職員が尋ねると、高齢の母親の年金から支払っていたことが分かったという。担当者は「民間であれば回収できればいいということになるのでしょうが……」と複雑な表情を浮かべる。【八田浩輔】
毎日新聞 2008年8月15日 地方版