ロシアとグルジアはサルコジ仏大統領の停戦案を受け入れたが、その合意が十分守られていない局面も目に付く。双方とも約束したことを着実に実施しなければ和平は絵に描いたもちになってしまう。
グルジア軍が南オセチア自治州へ攻め込んだのが今月7日。その後5日余りで停戦合意が成立した。比較的早期の合意といえよう。
欧州連合(EU)議長国フランスのサルコジ大統領がモスクワとトビリシに飛び、迅速に調停に動いた。その手腕を高く評価したい。
六項目の停戦合意によると、双方はすべての軍事行動を中止し、軍を今回の戦闘開始前の地点に撤収しなければならない。その後、南オセチアとグルジア内のもう一つの紛争地域であるアブハジア自治共和国の安全保障のあり方について国際的な協議を始めるとされる。
だが、双方とも合意通りには軍の撤収を進めなかったり、ロシア軍に同行している南オセチアの武装勢力が略奪を繰り返したとの情報もある。紛争解決のためには停戦合意を着実に実行することが不可欠だ。
合意の中には、南オセチアで国際的監視体制ができるまでロシアの平和維持部隊が活動できる旨の条項が盛り込まれている。今後、その規模や活動内容について、もめる可能性がある。
ブッシュ米大統領は13日、グルジアの主権と領土一体性は尊重されるべきだと強調、グルジア支援を明確に打ち出した。これに対しロシアのラブロフ外相は米国が今のグルジア指導部をつくり上げた、などと言い返した。米ロ間の舌戦は激しさを増している。
米ロ関係は米国の欧州ミサイル防衛問題などで既にかなり冷却化しているが、グルジア紛争を機に新冷戦ともいえるような段階に入るのではと懸念される。
米ロはテロとの戦い、イランの核問題への対応などで協調の道を閉ざしてはならない。
今回の紛争への対応で存在感を示せないでいるのが国連安保理だ。米ロの対立で決議案をつくれないでいる。特に常任理事国が当事者の場合、安保理が機能しないことが浮き彫りになった。今の安保理の限界だ。