「【模型王ガンプラ】（４）フロンターレとコラボ　ファン拡大狙う」の記事詳細：イザ！

記事本文

　サッカーとプラモデル。共通点の見えない２つが、川崎市中原区にある「等々力陸上競技場」で１つに重なり合っている。バンダイとＪリーグ１部に所属する「川崎フロンターレ」では０６年７月から、「機動戦士ガンダム」のプラモデルを使ったコラボレーションをスタートさせた。

　手始めに、フロンターレに所属する選手たちに選んでもらった「ガンプラ」を、青と黒のフロンターレカラーに塗って競技場に展示し、人気投票を行った。０７年からはメーンスタンドにコーナーを作って「ガンプラ」の販売も開始。選手のカード付きで、これまでに３５００個ほどが売れた。

　「家族や女性に『ガンプラ』ファンをひろげたかった」とホビー事業部のマーケティングチームでリーダーを務める藤原孝史さん。８０年の発売から３０年近くたち、すっかり市場を確立した「ガンプラ」だが、他のホビー商品と同様に、少子化という問題がのしかかっている。加えて「ガンプラ」は、ロボットの模型という商品の性格もあって、１０代の後半から２０代、３０代の男性にファンが集中しがち。世代をひろげる必要があった。

　「Ｊリーグのチームで、もっとも家族連れのファンが多いチームがフロンターレだった」と藤原さん。来場者に楽しんでもらいたいというチームの考えもあってコラボが実現した。３シーズン目を迎え、ファンにも定着。「選手をイメージした『ガンプラ』を作って競技場に持ってきてくれるようになった」。

　「ガンプラ」を楽しむ年齢層を下げる施策も始まっている。カジュアル衣料の「ユニクロ」では３月から、最新シリーズ「機動戦士ガンダム００（ダブルオー）」に登場する「ガンダムエクシア」の限定カラー版プラモデルを、キッズ向けＴシャツとセットで販売した。子供のころから「ガンプラ」に親しんでもらえば、大人になっても「ガンプラ」を作り、子供にも面白さを伝えてくれる。長期的なスパンでユーザー作りが進む。

　模型ファンのネットワークを広げる施策も進行中だ。「街でプラモデル作りの楽しさを伝えてくれるショップを増やしたかった」と藤原さん。そのためにバンダイでは、０７年から「プロショップ」の制度をスタートさせた。割引価格で新製品を手に入れられる量販店も販路として大切だが、プラモデル作りの楽しさを草の根的に広める場として、専門ショップの育成・強化も必要だと考えた。

　「プロショップ」になるには各店で最低１人、「ガンプラ」作りを極めたマイスターを登録しなくてはならない。年に１度の講習会への出席や、送られてきたサンプルの展示も必要。手間はかかるが、そうした意欲には販促品や「プロショップ」でしか買えない限定版「ガンプラ」の提供で応える。すでに約７５０店舗が登録して、それぞれの街で「ガンプラ」の面白さを子供たちに伝道している。

　商品力なら圧倒的。しかし売る努力も怠らない。ヒットには理由がある。

＝おわり

　（谷口隆一）

記事タイトルまで戻る