政治家の問題発言を私は失言とは呼ばないことにしている。失言を辞書で引くと「言ってはいけない事をうっかり言ってしまうこと」(新明解国語辞典)とある。およそ「うっかり」どころの話ではない場合が多いからだ。
ナチスドイツを強引に(としか私には思えない)引き合いに出して、民主党を批判した自民党の麻生太郎幹事長。太田誠一農相は食の安全対策に関して「日本国内は心配ないと思っているが、消費者がやかましいから徹底する」などと語った。
単なる揚げ足取りはメディアも慎むべきだ。だが、そもそも、人は思ってもいないことを口にはしない。両氏の発言の性質は違うが、ともに失言というより、本音を述べたというべきであり、自らの考え方や認識、それまで得てきた知識や教養といったものが、そこに如実に表れているのだと思う。
だからこそ、簡単に見逃すことはできないのだ。仮に受けを狙ったジョークのつもりだったとすれば、軽率過ぎると言うべきである。
以前にも書いたが、建前を言うのは偽善的で、ともかく本音を語るのがいいことだ、あるいは分かりやすくておもしろければ、それでいいといった風潮が社会全体で強まっているのも気になる。
思ったことを、ずけずけと話す。恐らく、麻生氏の「国民的人気」も、それが大きな要素なのではなかろうか。
でも、他者に配慮することなくストレートに本音をぶつけ合えば済むわけではない。守らなくてはならない建前、節度もあるのだ。
とりわけ政治家には。
毎日新聞 2008年8月14日 0時03分
8月15日 | 目指すは金!=福本容子 |
8月14日 | 本音・建前…失言=与良正男 |
8月13日 | 楢山節考=磯崎由美 |
8月12日 | ゲンキデアソンデオリマスカ=玉木研二 |
8月11日 | スピルバーグなら…=坂東賢治 |