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2008年8月15日

 ジャージーの胸の日の丸に、右の拳を重ねる。北島康介選手独特の「いざ出陣」の祈りのしぐさが、きのうも見られた。日の丸の誇りをかけて泳ぎ、日の丸の期待にこたえた快挙だった

大一番の前、緊張が頂点に達した時の選手たちの姿は、興味深い。44年前の東京五輪を撮影した市川崑監督の映画には、陸上100メートル決勝の選手たちを望遠レンズでとらえた場面があった。放心したような顔、震えの止まらぬ唇、宙を泳ぐ目…。心と体を襲う緊張感と闘う表情が、あますところなく映し出されていた

闘志満々の顔とはかけ離れた映像に驚きを覚えたが、あれも見えざる何かに対する祈りの姿だったのか。人事を尽くして天命を待つ。そんな思いを抱いて、選手は大舞台に立ち続けている

連続2冠を成し遂げた北島選手は、周囲への感謝の言葉を何度も口にした。胸の日の丸に、さまざまな祈りを込めて手にした栄光である

きょう「終戦記念日」。列島は鎮魂の祈りに包まれる。繁栄の礎となった人々に感謝の祈りをささげる日でもある。平和な時代の戦士が掲げる日の丸が、ひときわ美しく映る。


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