ハンセン病問題基本法の成立を受け、その意義と課題を探る学習会が3日、金沢市であった。講師の藤野豊・富山国際大准教授(日本近現代史)は「法律ができても、国の責任を忘れてはならない」と訴えた。
基本法(ハンセン病問題の解決の促進に関する法律)は、全国13の国立療養所の医療確保、地域開放などをうたう。6月に議員立法で成立し、市民団体「ハンセン病支援・ともに生きる石川の会」(木村吉伸会長)が学習会を企画した。
藤野氏は「本来は隔離以前に戻し、入所者が故郷で暮らすこと。だが現実には親族と断絶し、断種で子孫もなく、戻る場所がないから基本法を作った。あくまで次善の策だ」と指摘。国の過ちの上に現在があることを強調した。
その上で、高齢者医療センター、障害者リハビリ施設などの案がある療養所の将来構想について、「隔離政策で離島など極めて不便な所にある」と課題を挙げ、地域で幅広いアイデアを議論する必要性や、ホテル宿泊拒否など現在も残る差別意識の払しょくを訴えた。
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この日は金沢市出身のハンセン病回復者で、問題解決を訴え続けた歌人、浅井あいさん(05年、85歳で死去)の命日。16歳で群馬の療養所に入った浅井さんの墓は「せめて死んだら帰りたい」と故郷に建てられた。学習会に先立ち、参加者は同市・奥卯辰山の墓前に花や線香を手向けた。木村会長は「ハンセン病問題の全面解決へ、思いを新たにした」と話した。【野上哲】
毎日新聞 2008年8月4日 地方版