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体の表面をほとんど傷つけず腫瘍摘出、大阪大が世界初(1/2ページ)

2008年8月14日

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 腹を切らない腹腔(ふくくう)鏡手術以上に傷をつくらない新手術で胃の腫瘍(しゅよう)を取り除くことに、大阪大学病院の中島清一助教のチームが世界で初めて成功したと、14日発表した。女性患者の膣(ちつ)から内視鏡を入れ、膣壁を貫通して患部の外科的処置をした。腫瘍は3センチ大だったが、患者の負担が極端に軽く、手術の翌日から鎮痛剤なしでベッドを離れ、歩ける状態だという。

 新しい手術法は「NOTES」と呼ばれ、口や肛門、膣などから内視鏡を入れ、胃壁などに穴をあけて手術する。

 手術は13日に消化器外科、消化器内科、婦人科の合同で行われた。患者は50歳代の女性で、膣から入れた内視鏡で約3センチの胃の腫瘍を切って取り出した。専用の内視鏡などが開発されていないため、今回は鉗子(かんし)が必要で、1センチ大の穴2カ所をへそ近くにあけた。出血は20ミリリットルにとどまった。患者は、鎮痛剤なしでまったく痛みを訴えていないという。

 NOTESは、理論的には体の表面を傷つけず、神経などの関係で痛みを感じにくい体内で穴をあける。開腹部の癒着による腸閉塞(へいそく)といった合併症も減り、入院期間も短縮できるなど多くのメリットが見込める。

 一般の胃の開腹手術では約15センチ切開する。普及している腹腔鏡手術では、腹部に1センチ程度の穴を数カ所あけ、切り取った腫瘍を取り出す時に腹部を4センチほど切る必要がある。体表の傷は患者の痛みなどの負担になる。

 胆嚢(たんのう)摘出などで100人以上のNOTESの手術例が米国や南米にあるが、腫瘍の摘出は世界初だという。今年6月に大学の倫理委員会が手術を承認していた。

 中島助教は「手術の安全性をさらに高める機器を開発し、倫理面にも配慮して患者の負担がより少ない治療法につなげたい」と話す。(林義則)

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