そこはかなりの田舎で、バスは1時間に2台くらいしか来ない。所要でそのバスを利用したときのことだ。
バスに乗り込むと、なにやらシートに携帯が放置してあった。まぁ忘れ物だな。 オレはそのシートには座らなかったんだが、すぐに女の子2人が、どかどかとそのシートに向かう。 2人とも髪を金髪に染め上げて、着ている服も化粧も含めて、いかにも汚ギャル系に見えるその2人は、その見てくれに似合わず、バスの外に向かって大声で叫んだ。 「携帯忘れてるー!」 他人のことなんて知ったこっちゃない、とでも言い出しそうに見えるその風体からは想像もできない積極性に、世の中捨てもんじゃないなと感心しきりだったわけだが、肝心の、外の反応はない。 運転手さんがその声に後ろを振り返ったら、女の子も、携帯を運転手にかざして見せて、「これ忘れ物みたいです」と伝えた。 運転手が、「ああ、あそこの学生のだべ」と、あごで、もう結構遠くに行っている女子高生3人を示した。むしろこの運転手さんの態度がどうなんだべと思われた。 すると、その金髪少女は、バスを駆け下り、外の女子高生に向かって猛ダッシュ! どうやら、携帯は間違いなく女子高生のものだったらしく、手渡して金髪少女はバスに戻ってきた。 心の中で拍手しましたよ、オレは。 見た目によらず、いいところあるじゃないかと思っていると、走り出したバスの中で、携帯の呼び出し音。金髪少女2人づれの片方の携帯だった。 話し始めようとするその子に、さっき猛ダッシュした女の子のほうが、 「バスの中だよ。通話はやめないと!」 とか言ってる。こいつどこまで、見てくれとのギャップを広げるつもりだ?と思ったわけだ。 そりゃ、すべての金髪少女がみんながみんなパープリンなわけはなくて、まじめにやってる人のほうが圧倒的に多いに違いない。でなきゃ普通に社会が成り立たないもの。いいものを見せてもらったと思った。 しばらくすると、走っているバスの中で、この金髪少女2人組みの話し声が、聞くとはなしに耳に入ってきた。ってか、お前ら、声でかい! と思ったわけだが。 「明日、仕事なんだよぉ~」 「げ、あいつといっしょじゃん」 「そ~なんだよぉ。休もぉかなぁ~」 「あいつ、まじうざいよねぇ」 「どうにかしてほしい」 「社長に言って、やめさせようかぁ~」 ……人は見かけによるときもあった。
13点
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