ブログ『Letter from Yochomachi 』で紹介されていて、読んでみようかなと思ったのです。でも、新書1冊をアマゾンで注文すると、送料取られるので、「今度書店に行ったら探してみよう」と思って、すぐには購入しませんでした。先日、時間つぶしの気まぐれに通勤途中の書店に立ち寄った際、「そうだ、内田樹の新書を買おうと思っていたんだ!」と思い出し、書棚を探したけれど見当たりません。買おうと思う前は、書店で見かけていたのに、いざ買おうと思った時に立ち寄った書店には置いていない。マーフィーの法則にでもありそうなことです。
内田樹のブログをいつも読んでいます。ブログも面白いです。テレビや、自分の周りの生活圏にいる人からは聞くことのできない、ユニークな視点での社会評論が新鮮です。
そのブログに、近著の宣伝が書かれていました。『こんな日本でよかったね』という本です。略して『こんたね』。その宣伝読んで、「これと一緒に『寝ながら学べる構造主義』がアマゾンで送料無料で注文できる!」と膝を打ち、パソコンからカタカタ入力して注文しました。
偶然ですが、予約注文していた「ハリポタ最終巻」『ハリー・ポッターと死の秘宝』と一緒に届きました。
のべ数時間で読み終わりました。通院している病院の待合室で読み始め、通勤電車の行き帰り1往復半で読み終わりました。やさしい文章ですらすら読めますが、引用されている原文はかなり難解。「寝ながら学べる」かもしれませんが、飽くまでも入門書。この本で得た知識を基礎に、より詳しく説明した本を読まないと構造主義を理解したとは言えないようです。「あったいまえ」ですけれど、「これだけ読めばすべてわかる」とは謳っていないし、そんなことを謳っていたらその本はインチキなのかも。
マルクス・フロイト・ニーチェから始まり、ソシュールを紹介。そして「構造主義の四銃士」の、フーコー、バルト、レヴィ・ストロース・ラカンをひとり1章づつ割いて解説しています。この系譜だけでも、きちんと構造主義を系統だって勉強したことなどない私には、ありがたい整理です。人文科学・社会科学系の一般書を読んでいれば、いやでもこれらの名前に触れるはずで、私もこれらの名前を何度となく目にしていたはずなのですが、彼ら構造主義者の思想的位置などまったく理解していませんでした。本書のまえがきで
私たちがあることを知らない理由はたいていの場合一つしかありません。知りたくないからです。
より厳密にいえば「自分があることを『知りたくない』と思っていることを知りたくない」からです。
と書かれています。私もまた、構造主義を「知りたくない」という無意識の拒絶心があったのでしょうか。これはこれで、面白い設問ですが、まだ文章に書いて披露できるほど考えがまとまりません。ただ、無意識の拒絶が心の中にあったのかもしれません。「構造主義」は、自分にとってタブーとなるような主張を含んでいると、直感していたのかもしれません。
本書を読んでいて、内田樹のブログや何冊か読んだ本に書かれていたことが、構造主義を基礎にしていたことが、改めてわかりました。構造主義を使うと、内田樹のようなユニークな視点で社会を見ることができるのかもしれないと、感心しました。
本書を読み終わって、内容を振り返ってみると、不思議なことに「全部知っていた」という気持ちになりました。おかしな話ですが、構造主義なんてきちんと勉強したことはないのに、本書で出てくる考え方は、何もいまさら「新しい発見」と言ってありがたく思うものではなく、常識的なことのように思えたのです。
本書の第1章で書かれているのですが、
いま私たちが生きている時代は「ポスト構造主義の時代」と呼ばれています。(中略)
「ポスト構造主義期」というのは、構造主義の思考方法があまりに深く私たちのものの考え方や感じ方の中に浸透してしまったために、あらためて構造主義者の書物を読んだり、その思想を勉強したりしなくても、その発想方法そのものが私たちにとって「自明なもの」になってしまった時代(中略)だという風に私は考えています。
という筆者の言う通りなのかもしれません。
なぜ、「自明なもの」になっていたのでしょう。不思議です。学問的知見が、一般庶民の「常識」にまで浸透するその機構は、どうなっているのでしょう。知らぬ間に、それを当然と思っているなんて、「洗脳」されていたのでしょうか。

一緒に買った「こんたね」は、まだ読んでいなくて、これから読むところです。でも、「こんたね」は、ブログが元になっているようですから、もうすでに一度読んでいる文章がたくさん出てくる(すべて読んだことのある文章なのかも……)
「こんたね」の副題は「構造主義的日本論」です。構造主義を、少し意識しながら読めば、ブログで読んだ時とは別の新しい発見ができるかもしれない。そんな期待をもって、「こんたね」=
『こんな日本でよかったね』を読んでみたいと思います。
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