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2008年版
[代理出産についての基礎知識]
[基礎知識]代理出産は不妊治療の決定打になるか?


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変わる出産と子育ての自然なリレー
 日本では晩婚・晩産化によって、不妊治療人口が大幅に増えている。日本の夫婦一〇組のうち一組が不妊と考えられ、約五〇万組の夫婦が何らかの治療を受けている。
 精子を人為的に女性の子宮に注入する人工授精は一九四八年から行われ、八三年に初めて体外受精に成功した。〇四年に体外受精で生まれた子供の数は五年前の一・五倍の一万八〇〇〇人。新生児の六一人に一人は体外受精児だ。厚労省は〇七年度から体外受精児二〇〇〇人以上を対象に、誕生から学童期(小学生)までの長期追跡調査に乗り出した。八四年に国内三例目の体外受精児として生まれた女性が〇三年に自然妊娠で男児を出産していたことが〇七年に分かり、体外受精児が普通の赤ちゃんと変わりなく成長することが証明され始めている。
 とはいえ、生殖補助医療が万能なわけではない。体外受精による妊娠は、自然妊娠よりも異常が多く発生するとの調査結果を、聖路加国際病院の酒見智子医師らが〇七年四月にまとめている。閉経後に米国で卵子の提供を受け、体外受精で妊娠した超高齢妊婦は合併症の発症率が高く、八割が入院を要していたことが、東京日立病院の合阪幸三産婦人科医長の調査で〇七年七月に分かっている。
 日本産科婦人科学会は、代理出産のほか卵子や受精卵の提供も禁止している。二〇の不妊治療施設でつくる「日本生殖補助医療標準化機関(JISART)」は、西日本の医療機関に対して友人提供の卵子を使う不妊治療の実施を認め、〇七年六月、日本産科婦人科学会、日本学術会議、厚生労働省に対して卵子提供体外受精の実施を申請したが、日本産科婦人科学会は九月、「一学会ではなく公的な結論を期待すべき」と回答を留保する方針を決めた。
 日本学術会議の「生殖補助医療の在り方検討委員会」が〇七年八月に開かれ、向井さんと本論の筆者である根津医師らが出席し、国に前向きな対応を求めた。法律や社会通念も追いつけない生殖補助医療の急進展は、不妊に悩むカップルに希望を与えているが、リスクの少ない適齢期に産むという出産と子育ての自然なリレーを変えつつある。


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論 点 代理出産を認めるべきか 2008年版

私の主張
代理出産とは究極の人間愛のなせる業である
根津八紘(諏訪マタニティークリニック院長)


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