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論 点 「代理出産を認めるべきか」 2008年版
代理出産とは究極の人間愛のなせる業である
[代理出産についての基礎知識] >>>

ねつ・やひろ
根津八紘 (諏訪マタニティークリニック院長)
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リスクはあるが、対処法もある
 代理出産を行った場合、生ずる問題点として以下のようなものが考えられる。
(1)代理母が負う危険性
 ボランティアとは、時として死も覚悟しなければならない場合がある。代理出産においても死を覚悟して行わなければならない場合がある。それを承知の上で、ボランティア精神の下で成り立つことであるならば、国として保障制度を確立しつつ、サポートしながら認めるべきことではなかろうか。
(2)当事者間のトラブル
 何をしてもトラブルというものは起こり得る。ならば様々なトラブルを仮定し、法の下での解決を考える。トラブルが起こり得るとして、前進しないのであれば何事も新しいことはできない。
(3)子供の法的地位
 前述したように実の親が認知することにより成り立つ家族法ができれば何ら問題はない。子供に対しては、たとえ法ができなくても産んでくださった方を新しい観点の生みの親とし、畏敬の念を持たせながら育てればよい。
(4)生まれてきた子供を実の親が引き取らなかった場合
 産んだ親が子供を放棄することはいくらでもある。そういうことは、ここで述べている代理出産にはまずあり得ないし、あったとしても普通の親の場合と同じに対応すればよい。
(5)両親の離婚
 この場合は、普通の離婚の場合と同じ。
(6)女性を子供を産む道具としていないか
 道具とするか否かは、そこに人間愛がないかあるかによる。代理出産は窮極的人間愛の結晶。


アメリカとは違う日本での代理出産
 過日、記者会見の席上、代理母を公募して四〇名ほどの応募があった旨の発言をしてから時間をおいて、応募者へのアンケート実施をした。一〇項目ほどの設問の中には、「もしかしたら代理出産によって貴方が亡くなることもあり得ますが、そのことに関してもご家族は納得されていますか」の類の項目が入っている。この一項が決定的となっているのか、一カ月余経ている今、一通のご返事も返って来ていない。
 今までは身内間でのケースに私が関与する形をとってきた関係上、当事者の責任の下で代理出産は行われてきた。しかし、身内に適任者がいない場合はボランティアを募るより仕方ないわけである。しかし、契約で成り立つアメリカ社会とは異なり、日本においては慎重に行われなければならないものと考えている。いずれにしても、四〇名ほどの代理母応募の現実は、感謝に堪えない次第である。
 現在、代理出産に対する国の判断は学術会議を中心に検討されている段階にあるが、代理出産を是とするならば、悪用する人間をコントロールする法律を、また、否とするならば、代理出産を必要とする夫婦のために代替案を提示していただきたいと思う。
 いずれにしても、代理出産を必要とする人達は、不妊症患者の中でも少数派である。このような少数派の人達のことを、不妊でない多数の人達がそれぞれ抱く価値観で排除することだけはしないで欲しいと願うものである。


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議論に勝つ常識
2008年版
[代理出産についての基礎知識]
[基礎知識]代理出産は不妊治療の決定打になるか?



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関連論文

筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。

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加藤尚武(鳥取環境大学学長)
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personal data

ねつ・やひろ
根津八紘

1942年長野県生まれ。信州大学医学部卒業後、沖縄県立中部病院でハワイ大学卒後研修コース履修。上村病院を経て、信州大学の産婦人科教室助手。76年諏訪マタニティークリニックを開設。減胎手術、非配偶者間体外受精、代理出産など、日本ではタブーとされてきた不妊治療をあえて実施し、医療界に問題提起した。代理出産は01年以来、5例を手がけている。著書に『子守うたを奪わないで』などがある。
執筆者他論文
(2002年)代理出産の禁止は子供がほしくても産めない人の基本的人権を奪う
(1999年)非配偶者間体外受精は時代の必然――学会が許さなくても私は続ける
(1994年)日母がどう反対しようと私は多胎妊娠に対して減胎術を止めない




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