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【社説】

マイナス成長 危険水域に突入した

2008年8月14日

 日本経済が再び、マイナス成長に転落した。景気後退が数字の上でも裏付けられた格好だ。政府は景気対策の策定を急いでいるが、財政再建を放棄してはならない。経済の体質改善こそが肝心だ。

 内閣府が発表した二〇〇八年四−六月期の国内総生産(GDP)速報は、年率換算の実質で前期比2・4%減、物価要因を勘案した名目でも同じく2・7%減に落ち込んだ。下げ幅では、〇一年七−九月期以来の大幅減になった。

 どんな需要がどれだけGDPの増加に貢献したかを示す寄与度でみると、内需はマイナス、頼みの外需もほぼ横ばいとふるわなかった。

 内需の内訳では個人消費、住宅投資、設備投資がいずれも落ち込んだ。原油高による企業収益の悪化が響いている。外需も自動車など輸出の落ち込みを原油輸入などの減少で相殺した形だ。

 昨年夏に米国の住宅ローン焦げ付き問題が発覚して以来、世界の金融市場は不安定さを増した。加えて、原油や食料の高騰が世界経済に暗い影を投げかけ、日本経済を直撃している。

 先行きについて、与謝野馨経済財政担当相は「長期的に続く話ではなく、対外的要因で起きたと楽観的に考える方が正解に近い」と述べているが、まさに日本を取り巻く経済環境は厳しさを増す一方だ。だからこそ楽観できないと受け止めるべきではないか。

 政府は経済対策のとりまとめを急いでいる。中身をみると、高騰する漁船の燃料費補てんや中小企業向けの信用保証など、いずれもかつてのばらまき財政復活を思わせるメニューが多い。

 赤字国債発行で財源を賄うなら、要するに将来世代の負担で政府が苦境にある漁業従事者や企業に資金を投入する形になる。それでは一時しのぎの麻酔薬のようなものではないか。

 原油をはじめ世界的に価格体系が変化している中で、麻酔薬をいくら投与しても、肝心の体力は強化できない。必要なのは、新しい現実の下でも採算がとれるように、規模拡大や市場整備を図る構造政策であるはずだ。

 目先の景気下支えは本来、金融政策が主役を担うべきだ。福田康夫政権が補正予算の編成など、財政政策に傾斜しているようにみえるのは、近い将来の総選挙を意識しているからだろう。

 選挙目当てで財政再建目標まで先送りするようでは、日本経済の復活は遠のくばかりだ。

 

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