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社説:マイナス成長 元気な家計が何より大事だ

 今年4~6月期の日本経済は物価上昇を除いた実質で前期比0・6%、年率2・4%のマイナス成長だった。このマイナス幅は01年7~9月期の1・1%以来の大きさだ。

 政府は8月の月例経済報告で、景気の基調判断から「回復」を外し、後退局面入りを実質的に認めた。4~6月期のマイナス成長はこのことを跡付けていると解釈できる。

 では、7~9月期以降も、景気はさらに落ち込んでいくのか。景気動向を最も反映するといわれている鉱工業生産は昨年秋から年末時点でピークを付けていた。企業の設備投資も製造業では昨年前半に天井を打っている。生産や投資を支えている輸出も昨年秋以降、弱含んでいる。

 昨年末から今年初めの時点に景気の山があるとみるのが自然である。そうだとすれば、4~6月期や7~9月期は景気後退の影が広がる時期である。

 需要項目別で、個人消費も民間企業設備投資も公共投資もマイナスになっているのはそのためだろう。

 今年半ばには在庫調整局面に入っているとみられることからすれば、米国景気のもう一段の悪化などがなければ、生産活動の低下は遠からず底を打つ可能性が高い。もともと、企業の研究開発や新規事業への投資意欲は根強いのだ。

 政府部門は公共投資削減政策が続いていることや、公共サービス抑制などの影響で引き続き成長にはマイナス要因として働き続けるだろう。

 そこで、あらためて注目されるのが家計だ。国内総生産の約6割を占める個人消費が着実に年率2%程度伸びていけば、経済全体でも外需や政府支出などの寄与も含め、同水準の成長は可能となる。ところが、4~6月期の個人消費は前期比0・5%減だ。最近でも1~3月期の同0・7%増を除けば、低迷している。所得の伸び悩みが最大の要因である。加えて、消費者はこのところの生活関連物資の値上がりで買い控え傾向を強めている。

 02年2月からの景気拡大は外需依存が特徴だ。現状でも、米国経済の動向が最も気になるように、国内よりも海外に目が向く。これはおかしい。

 どうやって家計を元気にするのか。このことに知恵を絞るのが経済運営を担当している政府・日本銀行の仕事だ。これまでの経験に照らしても、中途半端な減税では効果が一部に限定されるうえ、財源のあてもなく実施することは財政状況をさらに悪化させるだけだ。物価対策でもこれといった名案は浮かんでいない。

 家計が安心して消費する環境とは、雇用に心配がなく賃金もまずまずの水準にあることだ。こうした状況は政府だけでは作れない。景気回復のカギは家計と肝に銘じ、企業も努力しなければならない。

毎日新聞 2008年8月14日 東京朝刊

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