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国境なきデジタルコンテンツ戦争、韓国に勝算は?(中)

■成功の法則1=現実味溢れるキャラクターが予め必要

 リオ・チュ氏は「成功するキャラクターは人間の心の中に内在する最も普遍的な感性を引き出す」と話す。『千と千尋の神隠し』は両親への切ない思いを、『ムーラン』は社会的に差別を受けている女性の姿を描いているというのだ。同氏は「キャラクターが持つこれらの感性とニーズが自らストーリーを引き出し、観客の視線を引きつけた」と説明する。また、生き生きとしたキャラクターの姿を制作する重要なポイントとして「ディテール」を挙げた。「ディテールはキャラクターをヒューマナイズ(人間化)し、視聴者を画面に没頭させます。ディテールは文化であり、思いです」と述べながら、『千と千尋の神隠し』のある場面を紹介した。

 「『千と千尋の神隠し』には主人公がケガをした龍に薬を与えようとする場面が登場します。この想像上の動物を表現するために、どのような手法を用いたのでしょうか。宮崎駿氏はまず最初に東京の築地卸売市場に行きました。そして龍と最もよく似ているといわれる魚、ウナギが水槽の中で動いている様子と、外に出て動き回る様子を長い間観察しました。それから動物病院に行って獣医が薬を犬ののどの奥に入れて口を閉じさせる様子を観察しました。千尋が龍に薬を飲ませるこの生々しい場面は、実際にわたしたちが日常生活でよく見るものを組み合わせたものだったのです」

■成功の法則2=西欧的なストーリー展開を見習え

 リオ・チュ氏はキャラクターの次に重要な要素として、「西欧的なストーリー展開」を挙げた。「ハリウッド式のストーリー展開に慣れている観客に合わせる必要があります」と語る。さらに「?・!・.」という3つの記号を提示した。つまり話題を提供し、クライマックスで葛藤が解消される「序論-本論-結論」の三段構造だ。

 リオ・チュ氏はこの単純な常識に合わせるために、巨匠・宮崎駿のフィルムを脚色しなければならなかったと説明する。「宮崎氏は偉大な芸術家ですが、常に基本的な三段構造に従うわけではありません。そのため西欧の観客が慣れているストーリー構造に転換する作業を行いました。その結果、『千と千尋の神隠し』は『リリーのふしぎな花』を押さえてオスカーを受賞したのです」。『千と千尋の神隠し』はいくつかの修正を経て、日本での公開から1年2カ月後の2002年9月に米国で公開され、翌年アカデミー賞を受賞した。

 リオ・チュ氏は「米国人は特に“イエス・ノー”をはっきりと区別する結末を非常に好みます」と語る。『千と千尋の神隠し』が日本人の6分の1を映画館に引きつけたとしても、グローバル市場では比較的低調だった理由がここにあるというのだ。「最後の場面で千尋の友達ハクの死を暗示する場面が出てきます。日本の観客には余韻を残すのかもしれませんが、米国の観客にはそうではありません」

 リオ・チュ氏は韓国のアニメーションにおいては適切な事例がないとし、映画『グエムル‐漢江の怪物‐』を例として挙げた。「最後の場面でソン・ガンホ氏が銃を持って食事をします。残りの家族だけでも守り、自分は家長として生まれ変わるという意味で、韓国では感動を与える内容でしょう。しかし米国人の反応は異なっています。映画はおもしろいのですが、“あ、娘が死ぬのか”“これは何だ。娘も救えないのか”とこうなります。米国的な見方では、父が娘を守りきれなかったという点に大きな拒否反応を示すでしょう。ですから『グエムル』は芸術映画として受け入れられました。アジアのアニメーションの中には、このような点が参入障壁として作用するケースがよくあります。後にポン・ジュンホ監督に会う時に何か文句を言われるかもしれませんが、とにかくわたしが言いたいことはこういうことです」

パク・ジョンセ記者

ソン・ジョンミン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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