にわか北京在住の記者は、実はオリンピックの競技にはあまり興味がない。しかしある理由から、チケットを買わざるを得なくなり、行く気もなかった天津にまでサッカーを見に行くことになった。
チケットがないと公安が怪しむ? 当初の計画では、競技場で観戦せず、北京国際メディアセンター(BIMC)でNHKのテレビ放送を観ようと考えていた。そのため、当初はチケットも購入しなかった。 ところが、詳細はここでは省くが、記者は観光ビザで入国することになった。BIMCもは入れない。出国前、記者が住む北京のマンションの大家にそのことを伝えると、こんな返答が来た。 「観光ビザなのに観戦チケットを持っていないと、公安に怪しまれる。チケットを買っておいてほしい」(大家) というわけで、仕方がないので、興味もないサッカー予選の日本対ナイジェリアのチケットを、東京都内の代理店で購入してから出国した。1万5000円(発売時価格の約15倍)だった。 もっとも、北京で外国人登録のために公安に出向いても、チケットの提示は求められなかった。慎重な大家のアドバイスによって、もしかすると不要なチケットを買ってしまったのかもしれない。しかし、せっかくなので天津まで試合を見に行ってみた。 天津へ向かう普通快速の車内は、長距離移動の家族連れも多く、なごやかな雰囲気=8月10日、中国・北京-天津間の車内で(撮影:藤倉善郎) 北京・天津の移動は不便だった。両市を約30分で結ぶ「京津都市間鉄道」が開通したばかりだが、「北京南駅」からしか発車しておらず、同駅は地下鉄が通じていない。到着駅は天津市郊外の「天津西駅」だ。記者たちは、北京駅から普通快速で1時間半かけて天津西に到着した。 駅前は、北京とは打って変わって、田舎のような光景だ。広場や待合所には列車待ち人々がたむろっており、駅構内には便所のにおいが充満している。 試合会場への案内表示もないため、警官に道を尋ねた。警官はパスポートの提示を要求し、ひどく時間をかけて記者たちのパスポートを確認した挙句、「(会場へは)タクシーで行け」としか教えてくれなかった。 駅前のタクシーは、北京と違って運転手が駅前広場まで「客引き」に出てきており、いかにもガラが悪い。スタジアムの場所も分からないまま乗ってボッタくられても不愉快なので、とりあえず地下鉄に乗り、中心街の日本系ホテルで道を尋ねてからタクシーでスタジアムへ向かった。 後で知ったのだが、天津西駅からスタジアム行きのバスも出ていた。 天津のスタジアムで、観戦チケットを掲げて記念撮影する観客8月10日、中国・天津市内で(撮影:藤倉善郎) スタジアムでの座席は、最後方だ。サッカーのことはよくわからないので、試合の詳細は省く。結果はご存じのとおり1─2で日本が敗れ、1次リーグでの敗退が確定した。 負け試合だったこともあって、気分は最悪だった。最後部席で1万5000円もボッタくった代理店「メディア新日中」(港区青山)が恨めしい。スタジアムの周りにいたダフ屋からチケットを買った方が、なんぼかマシだったかもしれない。大家のアドバイスにも逆恨みした。 スタジアムの座席は、こんなに後(撮影:藤倉善郎) 帰りは、天津西から北京南まで高速列車CRH3「和諧号」を利用した。 見たところ車両は日本の新幹線そのもの。普通快速の2倍の料金だが、46元(約690円)は嬉しい。ただ、立派なのは車両だけで、乗車駅はあいかわらず小便くさく、改札前の中国人は例によって列に並ぶという概念がなく、無秩序に群れていた。天津甘栗も売っていない。 夜の天津西駅では、広場に寝そべる人も(撮影:藤倉善郎) 中国版新幹線の改札を待つ人の群れ。列なんか守らない(撮影:藤倉善郎) なんか悪いところばかりが目についてしまうが、北京南駅も、見栄えは立派だが未完成で、テナントもベニヤ板などがむき出し。タクシー乗り場は狭く車両も少ないため、無秩序な長蛇の列が続く。 「和諧号」の座席は快適だったが、それ以外はすべてがダメダメ。もっとも、日本を比較対象としてしまうことが、そもそもダメなのかもしれない。 車両は新幹線っぽくてカッコイイのだが……=同日、北京南駅で(撮影:藤倉善郎) 車両は新幹線っぽくてカッコイイのだが……=同日、北京南駅で(撮影:藤倉善郎)
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