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社説2 建国60年迎える韓国の苦悩(8/13)

 韓国は15日に建国60周年を迎える。日本による植民地支配からの解放記念日の「光復節」でもある。苦難を乗り越え、北東アジアで存在感を増しているが、還暦を迎えるなかで内政・外交ともに方向感を失っているような印象を受ける。

 建国当時と比べた韓国の経済発展は目を見張る。65ドル程度にすぎなかった1人当たり国民所得は、昨年初めて2万ドルを突破した。朝鮮半島の分断や朝鮮戦争を経験しながら、「漢江の奇跡」と呼ばれる急成長を達成。輸出主導型の経済システムを築き、造船や半導体など世界トップのシェアを持つ企業が育った。

 政治的にも軍事独裁から民主社会への道を歩んだ。自由主義と市場経済を選択した韓国の正しさは、独裁体制下で国際社会から孤立する北朝鮮との差をみれば明白である。

 民主化の定着とともに、国民の関心は「個人の生活安定」に移った。今年2月に実利主義を掲げた企業家出身の李明博政権が発足したのは、いわば時代の要請だった。

 だが米国の金融不安や原油高の影響で、年7%の実質成長率を目指した李政権の成長戦略は修正を迫られた。期待を裏切られた国民の政権離れで、大胆な経済政策を打ち出しにくくなるジレンマを抱えた。

 外交もしかりだ。当初は日米との連携強化を掲げたものの、米国産牛肉の輸入再開問題で国民の反感が強まった。先の米大統領の訪韓後も韓国内で反米感情はくすぶっており、米韓自由貿易協定(FTA)が年内に批准できるか予断を許さない。

 日本との間でも竹島(韓国名は独島)の領有権を巡る対立が続く。反発した韓国は9月に日本で開く日中韓首脳会談に出席するかどうか、なお態度を留保したままだ。

 北東アジアの安全保障にとって、日米韓の連携は欠かせない。特に北朝鮮の核問題の行方は流動的で、米国はテロ支援国家の指定解除を当面見送った。南北関係は今、北朝鮮で起きた北側による韓国人観光客射殺事件で最悪の状態にある。拉致問題を抱える日本とともに、北朝鮮に共同対処すべき時である。

 韓国にとって「実利」は何か。還暦が日米韓連携の重要性を再認識する機会になってほしい。

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