県伊那保健所や上伊那の公立3病院、市町村などでつくる「上伊那地域医療検討会」は12日、伊那市の県伊那合同庁舎で会合を開き、公立3病院間の連携や機能分担の可能性について検討していくことを決めた。具体的な検討方法やテーマは今後、各病院の事務長会議を通じて調整していく。
検討内容としては、経費節減など経営効率化に向けた共同の取り組み(医薬材料の共同購入など)や、限られた医療人材に対応した病院間の役割分担と相互の連携などが想定されるという。
7月に開いた伊那中央(伊那市)、昭和伊南総合(駒ケ根市)、町立辰野総合(辰野町)の各病院の事務長会議で、医師不足や厳しい経営環境の中で課題に挙がっている病院連携は、同検討会での議論がふさわしいとの結論を得た。これを受け、同検討会を主催する同保健所が提案した。
総務省の指示で各公立病院は、経営効率化などに向けた改革プランを年度内に策定するが、実効性あるプランとするには病院間連携の議論は不可欠とみられている。
公立3病院の医師数は2006年の104人をピークに減少し、今年度は91人。昭和伊南の減少が顕著で、06年比11人減の23人。辰野は同3人減の7人。伊那中央は同1人増の61人。
産科医療の連携体制の実施状況の報告があった。それによると、4月以降公立病院で分娩を唯一扱う伊那中央は7月の分娩数が111件と初めて100件を超えた。7月から分娩後の入院日数を短縮し、ベッド数を確保しているが、病院側は100件が上限と強調し、地域的にみても昭和伊南の分娩取り扱い復活が望まれるとした。
妊娠32週まで妊婦健診に応じる予定だった昭和伊南は、外来の予想以上の混雑で、22週くらいから伊那中央を紹介している。このため、「早いうちから遠くまで行かなくてはならず、不満の声がある」との指摘もあった。
伊那中央の小川秋実院長は「行政は本院までの通院の足を確保してほしい。バスは来ているが不便」と要望した。4月以降、助産所か自宅での分娩は23件で、9件は里帰り出産。医師不足の中、助産師の活用が期待されているが、日本助産師会県支部上伊那地区の池上道子地区長は「問い合わせは増えたが、リスクのことなど話すと、病院を選ぶ人が多い」と話した。