初競りの値が1房平均2万7千円、最高値10万円と聞いて、ため息が出た。当分は店先で眺めるだけになりそうな、ブドウ「ルビーロマン」のことである 1粒約30グラム、「巨峰」の倍以上という国内最大級の新品種は、石川県がブランド化を目指して開発した。苗木はまだ180本しかないが、いずれは全国展開を狙う 面白いのは、人工交配を繰り返してもうまくいかず、あきらめかけたころに、偶然の自然交配から育った木に目指す新品種が実ったといういきさつ。懸命の努力を見守る天が、力を貸してくれたブドウの「宝石」である 早く味わいたくなるが、そう簡単に口にできるようでは高級ブランドの名が泣く。栽培農家は、苗木をよそに譲らないという誓約書を県と交わして「宝石」を守っている。サクランボの高級品種など、不用意に持ち出された苗木が海外で大規模栽培され、産地を脅かすという事例がいくつもあるからである だから、産地で栽培が広がるのを待つしかない。まだか、まだかと待たされるのもごちそうのうち。いささか罪作りにも思える新しい自慢のタネの誕生である。
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