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この人に聞きたい:千葉大教育学部教授・明石要一さん /千葉

 ◇子供を地域の「宝」に--第3の大人から人を見る力学ぶ

 東京・秋葉原の17人殺傷事件をはじめ、若者が引き起こす暗い事件が目立つ。防止策はあるのか。千葉大の明石要一教育学部教授(60)に家庭、学校、地域の役割を聞いた。

 --若者の事件をどう思いますか

 ▼秋葉原事件の加藤智大容疑者は、仕事や社会への不満が動機と言われている。愛知県で起きたバスジャックの少年(14)は自分をしかった両親への反抗、父親を刺殺した埼玉県川口市の少女(15)は「勉強しなさい」と言った親に不満があったと話している。これらは大なり小なり、みんな経験すること。なのに歯止めが利かない。段階を踏まず、いきなり(殺人まで)飛んでいる。そうした心境はなかなな理解が難しく、教育学者として再発防止の答えを持ち得ないのは、歯がゆいし、悔しい。ただ手掛かりとして生活リズムの乱れがあるような気がする。今、小学校高学年の児童の約4割は、深夜まで起きているなど生活のリズムが乱れている。

 --加藤容疑者の家庭について、どう思いますか

 ▼地域に根を張らず、ふわふわと浮草のように世間を漂泊する自己完結型の閉じられた家族のような印象を受ける。小学校高学年から中学にかけての思春期は、家庭内だけでは手に負えない場合もあり、開かれた家族は「親離れ」として子供を世間に預ける。

 --家庭に求めるものは

 ▼地域の年中行事と家庭の年中行事をやってほしい。「地域デビュー」をさせるのです。子供は成長の過程で3種類の大人に出会う。第1の大人は親。第2は教師や塾の先生ら。第3は、さまざまな近所のおじさん、おばさん。第3の大人と出会うと人を見る目ができる。そこで「口上」を学ぶはず。

 --今の子供は第3の大人との出会いが少ないと

 ▼小学5年生の1日の歩数はこの25年間で半減して約9500歩。行動範囲が狭まり第1、第2の大人しか会わない。世間を見る力、コミュニケーション能力などが育たない。その結果、友達の遊びを腕を組んで見る「傍観遊び」が広まっている。家庭、学校、地域社会で自分から手を挙げないで済む利便社会になっている。子供には非常に不幸な社会と言える。

 --改善策は

 ▼「子供の時間」を設けてほしい。ギャングエージと呼ばれ、活発に活動する小学3、4年くらいの時期に、仲間と秘密基地作りなどをする「ちょい悪遊び」で、ルールや秘密を持つ体験をすると、反抗期でもとことんまでいかない。

 --格差社会の影響は

 ▼勝ち組と負け組の差が一番出やすいのは、学校よりも放課後。所得の多い家庭は、夏は海、冬はスキーなどのレジャーに出掛けたりするが、所得の低い家庭の子供は、テレビ、漫画、テレビゲームなどで過ごし体験が少ない。(文科省が00年から提唱、自然体験と生活体験をする)「全国子どもプラン」や公民館で生活しながら学校に通う「通学合宿」などを活用して、トラブル解決などを学んでほしい。地域社会も、子供を地域の「宝」として育てるべきだ。【聞き手・橋本利昭】

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 ■人物略歴

 ◇あかし・よういち

 1948年生まれ。大分県出身。93年から千葉大教授。教育社会学専攻。文科省中教審臨時委員。「子どもの放課後改革がなぜ必要か」(明治図書)など著書多数。

毎日新聞 2008年8月12日 地方版

 
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