8月10日午後におこなわれた女子シンクロ板飛び込みは、北京っ子が最も楽しみにしていた競技の一つ――中国の国民的アイドル選手・郭晶晶選手が出場するのだ。そのため、会場の『水立方』の周囲は競技開始ぎりぎりになっても、入場券をなんとかして手に入れたい人と、それを高く売りつけたい人(要するにダフ屋です)とが入り乱れて、たいへんな混雑だった。
そんな中、「要門票(入場券が欲しい)」の紙を掲げる日本人青年がいた。慶応大学4年生の小浜一成さん。男子平泳ぎの入場券が欲しいのだという。
「末永くんを見たいんです。そのために昨日、日本から来たばかりなんです」
じつは小浜さん、高校時代に平泳ぎの選手として活躍し、同い年で同じ神奈川県の末永雄太選手とは、当時の良きライバルであり、いまも友人なのだ。
「僕は大学1年生のときに北島康介さんと同じ試合に出て、とてもかなわないと思って、競泳をやめたんです。でも、末永は地道にがんばってきて、五輪代表にまでなったんです。よかったなあ、って思ってます」
もともと北京に出かけるつもりはなかったが、大会が近づくにつれて、いてもたってもいられなくなった。入場券が完売しているのは承知で、アルバイトで稼いだお金をはたいてやってきた。友人の晴れ舞台をこの目で見たい――という一心で。
代表選手に寄せられる「がんばれ!」は、なにも「ニッポンのために」だけではない。ささやかで、個人的な、でも、だからこそ深い「がんばれ!」の声は、末永選手にかぎらずすべての選手に聞こえているはずだ。
残念ながら、末永選手は100メートルでは11日の決勝に進めなかったが、13日には200メートルの準決勝がある。定価よりもうんと高いお金で当日の入場券を手に入れた小浜さんも会場にいるだろう。末永、がんばれ――小浜さんの声援が歓声に変わるといいな。