「胎内記憶」認め、母子のきずな深める分娩
「今ある喜びも苦しみも、生きにくさも、すべては胎内から始まっている」−。赤ちゃんの「胎内記憶(胎内にいた時の記憶)」を認め、胎児を一人前の存在として尊重することが、いいお産・いい育児につながるとして、横浜市で池川クリニックを開業する産婦人科医の池川明氏が、「胎内記憶−命の起源にトラウマが潜んでいる」を出版した。胎内記憶について約10年にも及ぶ調査を続けてきた池川氏は、「赤ちゃんの『胎内記憶』『誕生記憶』を手掛かりにすると、胎児や新生児への接し方を再検討し、育児の重要な通過点としての分娩を、よりよいものに変えていくことができる」と話している。
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「夏の健康管理に気を付けて」(上) 池川氏は、埼玉県上尾市の上尾中央総合病院産婦人科部長などを経て、池川クリニックを開設。日本での「胎内記憶」研究の第一人者で、母と子の立場に立ったお産と医療を進めている。著書に「子どもは親を選んで生まれてくる」などがあり、同書は日本文芸アカデミー賞ゴールド賞を受賞している。
胎児や新生児の能力とその時期の記憶に関する研究は、欧米では1970年代から始まっており、池川氏は99年ごろから「胎内記憶」に関する具体的な調査に取り組んでいる。
池川氏は、独自の調査で「かなり多くの子どもに『胎内記憶』や『誕生記憶』があり、赤ちゃんには、はっきりした意思や感情があることが分かってきた」といい、「母親の胎内にいた時の環境格差が『バーストラウマ(誕生時の心の傷)』となって、その後の人生に多大な影響を与えている」と、お産の在り方の重要性を強調している。
これまでの調査を通じ、『胎内記憶』や『誕生記憶』を認めるメリットとして、池川氏は、▽『胎内記憶』を知る妊婦は、胎児に話し掛けるなどして、マタニティー期から母子のきずなを深められる▽父親もわが子を胎児期から意識し、誕生後も積極的に育児にかかわるようになり、家庭が円満になる▽父親が胎児に心を掛けていることを妊婦が実感すると、心理的に安定し、安産になりやすくなる▽『誕生記憶』を知る医療者は、母子の身体面だけでなく情緒面の安全にも配慮し、母子のきずなを深める分娩ができる▽分娩が母子関係の健やかなスタートになれば、その後の育児の困難さも軽減する−の5点を指摘している。
これらを踏まえ、池川氏は「母子のきずなを深める胎児期を過ごし、そのきずなを断ち切らない分娩で赤ちゃんが誕生するなら、子どもの心身に好ましい影響が及ぶ。子どもをめぐる問題が表面化している現代にあって、わたしたちは胎児期と分娩の在り方の重要性にあらためて注目すべき」と語っている。
角川SSC新書、203ページ。定価780円(税抜き)。
更新:2008/08/12 13:53 キャリアブレイン
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