ロシア軍が軍事介入した南オセチア自治州に近いグルジア中部ゴリに向け、ロシア軍は攻撃を繰り返し続けている。飛来するロシア軍を見ることはないが、遠くからの爆撃音を何度も聞いた。首都トビリシにつながる主要道では、首都方面から兵士を満載したグルジア軍の軍用車両が続々とゴリを目指す。一方でロシア軍の侵攻を恐れる多数の市民たちは自家用車に荷物を満載し首都を目指している。【ゴリ小谷守彦】
地元住民によると、人口5万のゴリ市民のうちすでに8~9割が逃げ出した。市内は11日夕、グルジア軍戦車や兵士を満載したバスがあわただしく駆け抜けていくが、商店はほとんどが閉店。市民病院の入院患者70人は、爆撃を恐れ5人の重傷者だけを残して避難した。医師ギウアシュウィリさん(26)は「ロシア軍がいつ襲撃してくるか。ここも危ないと皆が言う」と暗い表情だ。
市民がロシア軍を恐れる理由の一つに、軍施設とは無関係の一般市民が空爆の標的にされてきた事実がある。ロシア軍の誤爆とみるには市民の被害があまりに大きい。市民への直接攻撃はロシア軍への憎悪をかきたてる結果ともなっている。
小学校や幼稚園、集合住宅の集まるゴリ西部のコンビナティ地域では25人が死亡した。同地域では軍兵士の宿舎1棟も爆弾の直撃を受けたが、数キロ離れた最寄りの軍施設は攻撃対象にはなっていない。地元出身の非政府組織の男性幹部(37)は「攻撃は不要なものだったとしか思えない」と、ロシア軍に対する怒りをあらわにしていた。
毎日新聞 2008年8月12日 東京夕刊