インドネシア人看護師、受け入れ後の支援が課題
インドネシアとの経済連携協定(EPA)に基づいて、インドネシア人看護師・介護福祉士候補者らの第一陣が、先ごろ来日した。山口市の医療法人和同会山口リハビリテーション病院(180床)でも、早ければ来年2月に2人の看護師候補者が勤務を開始。日本の資格取得を目指すことになるが、最大の懸念は、せっかく来てくれた看護師が異国の風土になじんで暮らしていけるかどうかだ。同病院では、「公私にわたってサポートしていきたい」と話している。(兼松昭夫)
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山口リハビリテーション病院によるインドネシア人看護師の受け入れは、深刻化する看護師不足への対策の一環。
同病院を運営する医療法人和同会の重高博之理事によると、看護師の新規採用は2006年ごろから特に難しくなり始め、ここ2−3年は、離職者の穴を埋めるのがやっとの状態。
これまで新卒看護師の獲得も試みてきたが、大学病院など急性期病院への志向が強く、リハビリテーションなどの回復期や、慢性期をメーンに扱う同病院を希望するケースは多くはない。看護師に就職先をあっせんする看護協会の「ナースバンク」に問い合わせても、条件に見合う案件は数少ない。
医療現場を去った「潜在看護師」の獲得もあまり期待はできない。「いったん燃え尽きてしまったら、よほどのことがないとカムバックしてくれないだろう」と重高さん。
現在の診療報酬は、看護師をどれだけ確保できているかが病院の収入に直結する仕組み。近い将来、看護師に関する基準が引き上げられるのではないか、といった観測も飛び交っている。とはいえ、人数だけそろえたとしても、ハイレベルなスキルを身に付けた看護師がいなければ、病院運営上の選択肢の幅が狭まりかねない。
それだけに、優秀な看護師をどれだけ獲得できるかは、病院サイドにしてみれば今後の生き残りを左右しかねない大問題だ。
同病院が看護師の確保策を検討しているタイミングで、インドネシアと日本両政府がEPAを締結した。日本の資格取得を支援し、頼れる戦力に育て上げることができればと、候補者の受け入れ施設として名乗りを上げた。
■異国の風土になじめるか
インドネシア人の看護師候補者は入国後、海外技術者研修協会が実施する日本語研修を約半年間にわたって受ける。資格取得までの在留期間は3年で、国家試験は3回まで受験できる。在留期間内に資格が取得できなければ、帰国しなければならない。
また、受け入れ側は、看護師養成所の臨地実習受け入れ病院並みの体制が整備されていることが前提。その上で、看護師の人数など7項目の要件を満たす必要がある。
同病院では、仲介役を担う国際厚生事業団(JICWELS)によるマッチングの結果、2人の受け入れが決まった。候補者たちは8月7日に来日し、現在、日本語や日本の風習などについて学習している。早ければ来年2月にも同病院で勤務を始め、働きながら資格取得を目指す。
受け入れに当たって重高さんは、「インドネシアの人たちはお年寄りを大切にすると聞いている。サービス面で不安は感じていない」と話す。
最大の懸念は、候補者たちが異国の風習や風土になじめるかどうかだ。せっかく来日した候補者が志半ばで帰国してしまえば、一人当たり数十万円の受け入れ費用がふいになるというリスクもはらんでいる。このため受け入れサイドにとっては、候補者たちへの支援が重要になる。
支援策の一環として、同病院では地元大学が開講する日本語や生活文化に関する講座の受講を勧めているほか、地域住民の自宅でのホームステイなどの企画もある。
候補者たちのサポートを担当する下川貴世さんは、「資格取得に専念できるように、公私にわたって支えていきたい」と話している。
■高卒職員の資格取得支援も
同病院では、看護師を志す高卒者を発掘し、入職後に資格取得を支援する試みも検討している。同病院を運営する和同会では、看護師の養成学校を開設する構想があり、採用後は同校への入学を促す。今後は、奨学金の支給などの支援策を検討する。
「どこまでできるかは分からないが、できる限りバックアップしたい」と重高さん。
既存の養成所からの獲得が困難なら、自分たちで養成しようという発想だ。重高さんは「リハビリテーション看護の重要性が叫ばれている。この分野には急性期にない魅力がある」とアピールしている。
更新:2008/08/12 15:32 キャリアブレイン
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