![](/contents/017/244/734.mime4) 中国ペアに圧倒され、オグ(小椋・右)シオ(潮田・左)は試合中に冴えない表情を浮かべた(共同、クリックで拡大) |
オグシオを殺せ−。バドミントン女子ダブルスの小椋久美子、潮田玲子組は世界ランク3位で第2シードの中国ペアと準々決勝で対戦、0−2で惨敗した。確かに対戦相手は強かった。しかし、それ以上の難敵が、観客席にいた。
「シャーッ! シャーッ!」。中国選手がスマッシュを打つたびに、中国人の大応援団から、敵を威嚇する獣のような声が起こった。漢字を当てると「殺!殺!」。本来はスマッシュの時のかけ声は「扣殺(コーシャー)!」がフェアな応援なのに、オグシオにむけて会場全体で一糸乱れず「殺せ!殺せ!」の大合唱をしていたのだ。
バドミントンは中国のお家芸のひとつ。相手は確かに強かった。第1ゲームで8連続ポイント、第2ゲームで9連続ポイントを許すなど、オグシオは全く歯が立たず、途中からはまるでサンドバッグ状態に打ち込まれた。「試合で何が起きたのか全くわからなかった」(潮田)と振り返るのも、1打ごとのスタンドからの殺気がオグシオを蝕んだために違いない。
当初は「中国の応援は気にならなかった」といっていた潮田だが帰り際に内容を聞いて「怖いです。怖いです」と何度も口にして震えていた。小椋は「最後は完全に飲まれてしまいました」と話し「この4年間バドミントンをたくさんの人たちに見てもらいたくて一生懸命やってきました。相手への対策もきちんとしてきたのに残念です」と五輪を終え、うつむいた。
「殺せ」の引き金は、この試合よりも前に行われた女子ダブルス準々決勝。末綱・前田組が、世界ランク1位で第1シードの中国組を下す金星を挙げた。その報復として、中国人応援団が大挙してオグシオ2人に大ブーイングをしたのだ。
アウエーの洗礼として片づけるのは簡単だが、04年サッカーアジア杯ではジーコジャパンへ前代未聞のブーイングが中国各地で起き、大きな社会問題に。北京での決勝戦では優勝したジーコジャパンメンバーのバスが一時、中国人サポーターに取り囲まれ、警官隊とにらみ合いまで起きた。
中国側も北京五輪にむけて応援に関して「横断幕や国旗を振り回すことを厳禁」とする教則本を出したが、どこ吹く風。会場のあちこちで中国国旗が振られ、赤いシャツを着た中国応援団があちこちに陣取っていた。そして、「殺せ! 殺せ!」である。とても五輪とは思えない光景だ。
ZAKZAK 2008/08/12