【モスクワ=遠藤良介】ロシアとグルジアが交戦する南オセチア紛争でロシア軍は12日までに、グルジアの独立派支配地域を大きく越えて同国西部と中部に侵攻した。ロシアは中部ゴリなど4都市に部隊を進めているようだ。グルジアは首都トビリシの近郊まで退却して防衛線を張る戦術に転じ、首都では攻防戦の懸念から緊張が高まっている。
グルジアからの報道によると、ロシア軍は11日夜以降、首都トビリシから北西約60キロにあるスターリンの故郷ゴリや黒海沿岸のポチ、西部のセナキ、ズグディディに部隊を進めた。ただ、ゴリではすでに住民が退避して街全体がもぬけの殻と化すなど、各地での大きな戦闘や住民への攻撃は伝えられていない。
ロシア軍はこれまで独立派支配地域を越えることはないと言明していた。
グルジアのサーカシビリ大統領は国家安全保障会議で「ロシアはグルジア全土を征服しようとしている」と危機を訴えるとともに、テレビ演説で国民に団結と冷静な行動を求めた。大統領はトビリシ市民に自宅待機を呼びかけ、12日は多くの商店や銀行が休業するとみられる。
ロイター通信によると、グルジア政府は「グルジア軍は首都防衛のために退却している。政府は緊急に国際的な介入を求めている」との声明を出した。
一方、ロシア国防省当局者はインタファクス通信に、「トビリシに進軍する計画はない。グルジア指導部はパニックに陥っているようだ」と発言し、「ゴリに部隊はいない」「ポチには偵察隊を出しただけだ」などとグルジア側の情報に反論している。
ロシアのグルジア侵攻を受け、ポーランドとウクライナ、バルト3国の大統領らは近くトビリシを訪問し、グルジア支援の立場を示す方針を決めた。
|