[ Together with A Guest ]
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2005.10.08 O.A
染色作家
仁平幸春さん
![this week Guest](/contents/017/244/317.mime4)
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だから・・・想い入れだけでは、何も生まれてこないんです
渋谷:修行期間も振り返って、染色家として最も大切なことってどんなことですか?
仁平:染色だけに限らないですけど、職人仕事において大事なのは
「基礎技術の習得」と「客観的視点を持つ」ということですね。
渋谷:客観的視点というのは?
仁平:どうしてもものづくりをする人は、“想い入れ”でものを見てしまうんですよ。
想い入れは、実際素材が要求していることと違ったりすることがすごく多いし、
例えば“花”を柄にする場合、想い入れが強いと、
“花”を見ないで“想い入れ”を見てしまうんですよ。
渋谷:ズレが生じてしまっている…と。
仁平:そこから“染める”という行為に入ったとき、
どんどん素材が移り変わっていくんですけど、
それを想い入れで見ているので、
現実に起こっている変化と違うことを見てしまって
「失敗」になるんですよ。
渋谷:ふーむ・・・。
仁平:だから現実に起こっていることをきちんと見て、
次にやることを決めないといけないんですね。
だから・・・想い入れだけでは、何も生まれてこないんです。
素材を開くことによって僕自身も同時に開かれるんです。
それがものを作るときの基礎だと思っているんですよ
渋谷:仁平さんはデザインから染めまで全て一人でされていらっしゃるんですよね?
仁平:全て一人ですね。
仕立てや、ゆのしという生地を整える作業、あとはローケツ染めなんで
特殊なドライクリーニングをするんですけど、それ以外は全て自分で。
渋谷:どういったものを柄にしているんですか?
仁平:スケッチからおこすこともありますし、
伝統的な文様から派生させていくこともありますし、
あとは音楽とか、何かの招待状を読んだときのイメージを
形にすることもあります。
渋谷:仁平さんの作品って、現代っぽさもありながらも…
失礼かもしれませんが、仁平さんではなく、
昔昔の何百年も前の作家さんがした仕事なんじゃないかと
思わせるような雰囲気がありますよね。
仁平:そう言っていただくと、最高にうれしいですよ!
伝統と繋がっていて現代的であるということは、
それが一番正しい伝統との繋がり方だと思うので。
渋谷:柄がとっても繊細ですが、気力だけでなく体力も必要でしょうね。
二の腕もまるで鍛えている方のように逞しいんですけど(笑)、
それはやはり染めの作業でついてくるんですか?
仁平: 無駄な筋肉かも?(笑)
でもデザイナーの友人が僕のところに来て
「お前の仕事は過酷だなぁ」って言ってましたね(笑)。
渋谷:: ふふふ。そういうハードな仕事から、
こういうやわらかで繊細な感じを表現されていらっしゃるんですね。
仁平 : 生地の触感も目に見えるように整理してあげることも染色家の仕事なんですよ。
一般的には、自分の好きな柄を布に染めることが
染色だという解釈が多いと思うんですけど、
僕自身は、生地の質感や風合いと、文様と、色、
その3つが完全に調和していることが大事なんですよね。
その調和に僕の個性が乗るわけです。
そして僕自身が素材なり対象なりに関わり、
素材を開くことによって僕自身も同時に開かれるんです。
それがものを作るときの基礎だと思っているんですよ。
[ infomation ]
銀座もとじにて仁平幸春さんの個展開催
10月14日(金)〜20日(木)
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