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【主張】北島連覇 現状満足せぬ努力の勝利
北京五輪男子百メートル平泳ぎで北島康介選手が世界新記録をマークして金メダルを獲得、アテネに続き2連覇を達成した。競泳個人種目での日本選手の連覇は1928、32年大会の鶴田義行以来、76年ぶりの快挙だ。
頂点を極めても努力を重ね、自らの能力を高めようとする姿勢は、25歳の北島選手と同じ若者世代にとっても良い手本になるのではないか。
4年に1度開かれる五輪は、世界中のトップレベルの選手が集まり、しのぎを削りあう。同選手は天性のキック力の強さでアテネを制したが、それだけで勝ち続けられるほど甘い世界ではない。
今回は上半身の筋力強化に努め、手で水をかく幅を広げて推進力を一層増すフォームに変えた。あくまでも現状に満足せず、より高いレベルを追い求める貪欲(どんよく)な競争心を基本に、さらなる進化を目指した。
北京五輪開幕前、記録を次々と更新する英国スピード社製の水着「レーザー・レーサー(LR)」が話題となり、国内メーカーの水着を着用していた北島選手も、さすがに動揺した。しかし、LR着用を決断して本番に臨んだ。
さまざまな雑音に流されず、自らのスタイルを貫き、王座を守り続けたのは称賛に値する。
もちろん、紆余(うよ)曲折はあった。アテネ後、頂点を極めた虚脱感から選手生活から退くことを考えたり、パワーの源である足も痛めたりした。そのたびに周囲からの支援で乗り越えるなど、栄光への道が平坦(へいたん)でなかったことはいうまでもない。
また、柔道男子66キロ級の内柴正人選手も2連覇を達成した。この階級は強豪ぞろいで苦戦が予想されていたが、次々と難敵を倒して栄冠を勝ち取った。
その原動力となったのが、妻子への家族愛だった。「パパは必ずチャンピオンになるからな」と幼い息子に言い続けることで、自らを叱咤(しった)し、けいこに励んだ。30歳の勝負師が優勝を決めたあと、試合会場で何度も何度も子供の名前を叫ぶ姿は感動的だった。
いまや、家庭内における父親の存在感が薄れつつあるなかで、内柴選手の偉業は、世の“オヤジ”たちを励まし、勇気付けた。
北島選手は二百メートル平泳ぎで2大会連続2種目制覇に挑む。勢いを取り戻した日本選手団のさらなる活躍に期待したい。