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米政府が、北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を先送りすることになった。ライス国務長官が高村外相との電話でそういう考えを伝えた。
指定の解除は、北朝鮮が核開発計画を申告するのとセットになっている。申告の内容が十分なものなのか、正しいのかどうか。それを検証しなければならないのに、そのやり方について具体的な合意は何もできていない。先送りは当然の結論だろう。
ブッシュ大統領も「合意なしには解除しない」と繰り返していた。
米国は検証の進め方についての案を6者協議に示し、日中韓ロはとっくに同意している。北朝鮮だけがまともに応じていない。
北朝鮮はもともと、6者合意に基づく今回の申告に検証は含まれないという立場だった。申告と核施設を使えなくする無能力化、北朝鮮への経済・エネルギー支援とテロ指定解除。核放棄に向けたそういう「第2段階の措置」を終えた後に検証に入ればいいという考えなのだろう。
だが、先月の6者協議では、検証すること自体には北朝鮮も合意したはずだ。不十分な申告書であっては義務を果たしたことにならないのだから、当然のことだ。
指定解除の先送りには、米国の国内事情も大きくからんでいる。
もともと米議会には、ブッシュ政権が北朝鮮問題で成果を急ぐあまり譲歩し過ぎているとの批判が少なくない。北朝鮮は本当に核を捨てるつもりがあるのか。そんな根本的な疑念もある。
申告に対する検証の問題を中途半端にしたまま先へ進むことはできまい。
北朝鮮は「約束が違う」と反発するかもしれない。だが、6者協議の合意がこれで壊れたわけではない。
ブッシュ大統領が指定解除の意思を議会に通告して45日が経過した。手続き上は、いつでも解除することができる。北朝鮮が指定解除を望むなら、すみやかに検証に応じることだ。
日本との間についても、同じことがいえる。中国できのうから日朝政府間の協議が始まった。焦点は、北朝鮮が約束した日本人拉致問題についての再調査や、日航機乗っ取り犯の引き渡しなどをどう実行するかだ。北朝鮮がそれを進めれば、代わりに日本の独自制裁の一部は解除される。
そうした道筋はすでに明らかなのに、合意から2カ月がたっても具体的な動きはなく、口約束の域を出ていない。北朝鮮が実際の行動に踏み出す姿勢を見せない限り、テロ支援国家の指定解除と同様、日本も見返り措置は先送りにせざるを得ない。
6者合意の原則は「行動対行動」だ。行動が伴って初めて事態は前に進む。北朝鮮に求められるのは具体的な行動である。
勝つことは難しいが、続けて勝つことはさらに難しい。
04年のアテネ五輪から1400日余り。柔道男子66キロ級の内柴正人選手に続いて、競泳男子100メートル平泳ぎの北島康介選手が、北京五輪で2大会連続の金メダルを獲得した。世界中のライバルから目標とされる苦しさを乗り越えての快挙である。
五輪で頂点に立った選手の多くは、達成感と同時に虚無感を味わうといわれる。次は何を目標にがんばるのか。王者の地位を守るにしても、4年先は遠い。それまでに費やした努力と時間を振り返れば、先の長さに思わず立ちすくんでしまうのだ。
遠くを見るより、目先の目標を一つひとつ積み重ねることで突破口を開こうとしたのは北島選手だ。
アテネ五輪後、プロの選手として本格的に活動を始めた。プロなら、テレビCMなどの収入を得ることができる。だが、選手寿命が長いとはいえない競泳で、プロの選手として生計を立てるのは、大きなかけだった。
泳法の改良にも大胆に手をつけた。泳ぎを大きくして推進力を上げる。世界新記録をにらんでの挑戦だった。
北京五輪前、最新鋭の水着の騒動で、「泳ぐのは僕だ」と訴えた姿が印象的だった。「有言実行」が4年間を貫くエネルギーだったのではないか。
周りも認める天才型の北島選手とは対照的に、内柴選手は自らを平凡な選手と言い切る。それが強さだろう。
かつて60キロ級だった内柴選手がアテネ五輪を前に階級を上げたのは、五輪王者の野村忠宏選手がいたからだ。しかし、これを逃げたというのは短絡的すぎる。移った先の66キロ級は長く日本選手が勝てない階級だった。アテネ五輪後も、内柴選手は国際大会で何度も負けている。
「でも、勝てるんじゃないかな。ぼくには経験がある」。今大会前に、そう言っていた。自分の力量を見つめ、敗戦や失敗を糧にできる。遠回りの柔道人生をいとわない強さは、決して平凡ではない。
同じ柔道で谷亮子選手は3連覇を逃したとはいえ、5大会連続の表彰台だ。胸を張れる銅メダルである。
日本人選手以外に目を向ければ、そこでも様々なドラマが生まれている。
アテネ大会の金6個から今回は1大会個人最多の8個をめざす競泳のマイケル・フェルプス選手(米)は、すでに2種目で優勝し、好スタートだ。
射撃の女子エアピストルで2位のロシア選手と3位のグルジア選手が抱き合い、健闘をたたえた。開会式の当日、軍事衝突を始めた国同士である。
新疆ウイグル自治区では新たな警察襲撃があった。五輪休戦の理想からはほど遠いが、選手たちの力と技の競い合いはさらに熱を帯びていく。