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2008年8月12日

◎緊急経済対策 いま必要なのは本格減税

 政府がまとめた緊急経済対策の骨格は、物価高対策や省エネルギー対策などが柱で、景 気対策と呼ぶには内容が乏しく、効果はあまり期待できそうにない。深刻さを増す日本経済を本気で下支えするなら、即効性のある本格減税が必要であり、緊急経済対策に反映させてほしい。

 公明党は低所得層への配慮として定額減税の実施や低年金者、生活保護世帯への物価ス ライド分の前倒し支給など一兆円規模の減税を求めている。弱者救済の意味はあるとはいえ、これでは恩恵を受ける世帯が限られ、国全体の消費マインドを好転させるまでには至らないのではないか。必要なのは、企業の投資意欲や消費者心理をかき立て、景気を刺激することである。いま減税を決断しないと、景気は完全に失速し、さらなる税収減に苦しむことになる。

 景気対策としての減税が、政府・自民党内でほとんど論じられていないのは、財源不足 のためだといわれる。来年度の概算要求基準(シーリング)で、社会保障費を二千二百億円減らし、公共事業や政府開発援助(ODA)を3%、防衛費、国立大運営費、私学助成費をそれぞれ1%圧縮する一方、医師不足対策などで三千三百億円の「重要課題推進枠」を設けた。こんな状況下で、減税に回す余裕などないと言いたいのだろう。

 だが、自民党町村派は先月、「霞が関埋蔵金」を使えば、四年間で最大五十七兆円の財 源を確保できるとした提言を行った。元はといえば、国民から取り過ぎた税金であり、減税のかたちで国民に返し、景気対策に使うのは許されてよい。

 自民党の中川昭一元政調会長は、先月発売の月刊誌で、二・六兆円の所得税の定率減税 復活と二兆円の法人税減税を提言している。経済活性化こそが最重要の課題という中川氏の認識は間違っていないだろう。

 米国は既に所得税還付減税を柱とした緊急経済対策を実施し、消費刺激の効果を上げて いる。歳出削減の努力を続けながら、同時に本格減税を行うことに何ら矛盾はないのであり、日本もすぐに使える埋蔵金を洗い出し、減税を断行してほしい。

◎地元大学進学率 なお高める努力続けたい

 四年制大学の入学者のうち、出身高校と同じ都道府県にある大学に入学する学生の割合 (自県内入学率)が、わずかずつながら年々増加している。若者の県外流出に悩まされる地方にとって、好ましい傾向である。

 大学教育の環境の違いなどから、各県の自県内入学率はバラツキが大きく、文部科学省 の今年度の学校基本調査によると、全国平均が41・2%なのに対して石川県は36・5%、富山県は下位の18・2%となっている。石川、富山県とも人材確保のため県外に出た学生のUターン促進に力を入れているが、地元の高校生が地元の大学に進学する傾向をさらに高める努力が望まれる。

 自県内入学率の調査は一九七一年度から行われ、九二年度に34・9%と最低を記録し た後、上昇に転じた。微増ながら上昇傾向が続く理由について文科省は、地方で大学が増加したほか、仕送りなど経済負担を抑えたい家庭の事情、学生の地元志向などが影響していると説明している。

 そうしたことに加え、各大学の地域貢献や自治体、企業との連携強化も挙げられよう。 石川県では大学単独の取り組みだけでなく、県内の大学、短大、高専が連携して大学コンソーシアム石川を設立し、垣根を超えて学生の教育環境の充実を図っているほか、県などと協力して学生中心の地域貢献型事業を展開している。

 今年度は、能登半島地震の被災地の歴史史料調査や、地域の伝統行事支援など十件のモ デル事業が行われる。大学、学生、自治体が一体となって取り組む地域貢献事業は、自県内入学率を高めることにも役立とう。

 また、富大では地元金融機関が寄付講義を開設しているが、これも学生の県外流出を食 い止める一助になる。企業の寄付講義は実学の面で大学教育を補う有効な方法といえ、企業にとって人材獲得につながるメリットもある。大都市圏での採用が中心だった大手企業が地方の学生採用にも力を入れる状況のなか、地域企業が大学教育の充実に協力する試みは、もっと積極的になされてよい。


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