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◆第90回全国高校野球選手権記念大会第10日 ▽2回戦 高岡商0―5慶応(11日・甲子園) 慶応(北神奈川)が高岡商(富山)を5―0で下し、慶応普通部として準優勝した1920年以来、88年ぶりに夏2勝を挙げた。プロレスラー・力道山の孫にあたるエース左腕・田村圭(3年)が先発し、6回3安打無失点。右腕・只野尚彦(3年)との完封リレーで歴史を刻んだ。
左手でロージンをつかむ。白い粉が指先の汗にしみ込んだ瞬間、田村の集中力が最高潮に達した。3点リードの3回2死二、三塁。カウント2―2からの5球目。渾身(こんしん)のスライダーが主砲・田中翔のバットに空を切らせる。ピンチ脱出だ。アッパーカットのように激しく拳を突き上げた。ベンチで上田誠監督(50)と力強くハイタッチ。「田村、痛いよ!」闘魂サウスポーが威風堂々の快投を演じた。
「三振は狙いました。チームに流れを呼びたかったんで。ピンチは楽しかった。超、気持ちいい!」北京五輪百メートル平泳ぎで連覇した北島康介の名セリフとともに、先発左腕の笑顔がはじける。最速141キロの直球にスライダーが切れ、6回を3安打無失点。7回からは右腕・只野に継投し、完封リレーで16強入りだ。慶応の夏2勝は20年以来、実に88年ぶりの快挙。大正9年といえば祖父・力道山も生まれていない大昔だ。「意識はしなかったです」チャレンジャー精神で歴史に名を刻んだ。
天真らんまんな慶応ボーイ。だが「結構緊張する人なんです」と田村は自己分析する。エースをどうリラックスさせるか? 上田監督は考えた。ある日、「今年の夏は“クレヨンしんちゃん”に決めたよ」と妻・理江さん(50)に打ち明けた。宿舎から甲子園へ向かうバスの中で、アニメ「クレヨンしんちゃん」のビデオを流した。「―オラはすごいぞ天才的だぞ~」ナインは主題歌を合唱。肩の力が抜けた。さらに田村は試合直前、B’zの「LOVE PHANTOM」を3回聴いて精神統一。闘志を高め難敵を封じた。
部訓は「エンジョイ・ベースボール」。指揮官も「明るくないと、勝利の女神は来ないですから」と笑う。試合後、ナインは他の54校よりも、大きな声でインタビューに応じる。次戦の相手は青森山田だ。「自分らより実力は上。思い切りやれたらいい」と田村。陸の王者が若き血を沸騰させ、16年以来92年ぶりの頂点へ突き進む。
(2008年8月12日06時00分 スポーツ報知)
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