北京五輪、高校野球…と夏のスポーツイベント真っ盛り。若い選手たちを見ていて、時代が変わったなあ、と思わされるのが試合中の笑顔だ。絶体絶命のピンチに笑顔のエース。マウンドに集まったナインも全員にっこり―。試合はもちろん練習のときも「歯を見せるな」としかられていた世代には、そんなシーンは新鮮さと違和感が入り交じって見える。
笑いの持つ力がさまざまに研究されている。ストレスを感じると増えるコルチゾールというホルモンの量を落語鑑賞の前後で測定したら、多く笑うほど減っていたという研究結果がある。声を出して笑えば酸素が取り込まれて脳の働きが活性化する。免疫力も高まる。血流量が増える…など。自分で意図的に笑顔をつくるだけで、今は楽しいんだ、と脳が認識して実際に楽しい気分になるという効果もいわれる。
スポーツで言えば、大事な場面にプレッシャーで筋肉が緊張し、動きが悪くなるのを笑ってほぐし、追い詰められた気持ちもリセットするわけだ。競技にもよるだろうが、ピンチにこそ笑顔―は理にかなっているのだろう。もちろん、さわやかスマイルの裏に厳しい鍛錬の積み重ねがあるのは言うまでもない。
さて、わが身を振り返れば、パソコン端末に終日仏頂面で向き合っているではないか。取材で走り回っていた記者時代は人に会い、笑う機会も多かったが、デスク業務は何かと健康によろしくない。
ストレスの多い現代。選手たちの笑顔に学びたいものだ。
(津山支社・道広淳)