世界遺産を目指す平泉・中尊寺や、柳田国男の「遠野物語」、さらに宮沢賢治に石川啄木というと、関係するのは岩手県だ。瀬戸内地方とは距離があるが、関心を持つ人も多いようだ。
これらをテーマに岩手大で昨夏開かれた中高年向け講座には、近隣地域よりも岡山、広島県を含む西日本からの参加者が目立った。今年も中尊寺や遠野市などの現地探訪を盛り込んだ講座を九月八―十九日に開く。
五十歳以上が対象の「シニアカレッジ」と銘打ち、地方国立大学と大手旅行会社が共同で全国から受講生を募って行う生涯学習プログラムの一環だ。一昨年に二大学で始まり、昨年は五大学、今年は八大学に広がった。
香川大は昨年、受講生が少なく開催を断念したが、今年は九月下旬に実施する。瀬戸内海や讃岐うどんを主題に、実習船で海に出たり、うどん打ちを体験したりする。青森県・弘前大は三内丸山遺跡、長野県・信州大は上高地の探訪などがある。
大量退職する団塊世代などの知的好奇心に応え、地域性あふれる講座で観光振興などにつなげる。学生獲得を競う地方大学のアピールにも役立てようと、一石三鳥を狙う。
私立大などによる類似の別企画も登場している。「旅」と「生涯学習」の組み合わせは、時流に乗った試みといえそうだ。