小中学校で子どもたちの不登校が再び増え始めた。二〇〇七年度は全国で前年度より1・9%多い十二万九千二百五十四人に上り、二年連続で増えたことが文部科学省の学校基本調査速報で分かった。
不登校は教育関係者の対策強化などで、いったんは減少傾向をたどってきた。増加に転じた変化を敏感に受け止め、問題意識を強める必要がある。
病気や経済的な理由を除き、年間三十日以上欠席すると不登校とされる。中学生が十万五千百九十七人で前年度と比べ約二千二百人増え、全体の八割程度を占めた。
全生徒に対する割合は2・9%と少子化の影響で過去最高になった。中学生の三十四人に一人が不登校生という計算になる。小学生は前年度より約百人増え、児童全体に占める割合は0・3%だった。
不登校のきっかけについては「本人にかかわる問題」が最も多く、以下「友人関係」「親子関係」「学業不振」「いじめ」などが目立った。要因は複雑にからんでいるだろうが、不登校が増えた背景が気にかかる。
都道府県教委が寄せた回答によると、「人間関係を築けない子どもが増えている」が圧倒的に多かった。携帯電話やインターネット利用の低年齢化が進み、小さいころから人間的な接触が減っているといわれる。体験的に周囲とうまく折り合いをつけられない子どもが増加しても不思議ではあるまい。深刻に考えなければならない問題だ。
不登校生の数は現行の調査が始まった一九九一年度以降増え続け、〇一年度には過去最多の約十三万九千人に上った。危機感を強めた文科省は〇三年度に指導方針を転換した。
それまでは「登校への促しは状況を悪化させることがある」と待ちの姿勢を重視していた。方針転換では「ただ待つだけでは状況は改善しない」と早期の適切な働き掛けを打ち出し、相談体制の強化や不登校生を受け入れる「適応指導教室」の充実、ボランティアの積極活用などを図ってきた。
その効果があってか、不登校生の数は減少傾向が続いていただけに、二年連続の増加は残念である。対策の見直しが求められよう。
今回の調査では、不登校生が養護教員や適応指導教室に相談したり指導を受けたりしたのは約67%にとどまった。三人に一人はケアが及んでいないことになる。学校を中心に家庭や地域がさらに連携を深め、相談や指導の在り方などを幅広く検証してもらいたい。
神奈川県横須賀市にある原発の燃料製造会社「グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン」の工場で、ウランを含む溶液が飛散して作業員ら二人が被ばくする事故があった。同社では七月にもウランが飛散し、作業員一人が被ばくしたばかりである。
二件の事故とも作業員らの被ばく量は、一般の人が通常の生活で一年間に浴びる量を下回り、周辺への放射性物質の漏えいはなかったという。だが、原子力関連施設の事故は、一歩間違えれば大惨事につながる恐れが高い。短期間で相次ぐ事故に不安が募る。
同社によると、今回の事故はタンクのバルブの閉め忘れが原因だった。前回は管に付いている点検用ののぞき穴のふたを閉め忘れて事故が起きたとされる。いずれも安全管理がずさんだったとしか言いようがない。
一九九九年に茨城県東海村の核燃料加工会社で発生した大惨事を思い出す。日本初の臨界事故となり、死者を含む多くの被ばく者が出た。あの時もずさんな作業内容が問題になった。
臨界事故を受けて、原子力関連施設への安全規制などが法律で強化された。しかし、いくら法制度を整えても、現場の高い危機管理意識や責任感が伴わなければ効果はない。時間の経過とともに臨界事故が風化し、全国の原子力関連施設で安全管理意識が薄れている可能性はないだろうか。
地球温暖化が問題になる中で、影響が少ない原発の存在感が増しつつあるが、国民の不信感は根強いものがある。原子力施設に対する信頼を確保するには、危機管理を怠らず、住民や国民との溝を地道に埋めていくことしかあるまい。関係者はあらためてこの認識を徹底してもらいたい。
(2008年8月11日掲載)