多重債務者の相談急増――兵庫・大阪、窓口拡充急ぐ

 
              
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多重債務者の相談急増――兵庫・大阪、窓口拡充急ぐ

2008/08/11配信

近畿財務局も4月から相談員を配置した
近畿財務局も4月から相談員を配置した

国民生活センターなどに寄せられる多重債務に関する相談が増えている。消費者金融の上限金利の引き下げや、借り手に有利な最高裁判決をきっかけに、問題解決の糸口を探そうとする債務者が増えたようだ。なかでも関西は件数の伸び率が高く、全国を大幅に上回る。国や自治体が整備を急ぐ相談窓口の実態を調べた。

 「2年前からカード会社5社から借金し、金額が400万円にも及ぶ。どうしたらいいか」――。全国の消費者から相談を受け付ける国民生活センター(東京都)には返済困難に陥った人から問い合わせが相次ぐ。

 相談が急増したのは2006年。最高裁判決が、利息制限法の上限(金額により年15―20%)を超える利息の受け取りを厳しく制限したのがきっかけだ。06年末には出資法の上限(年29.2%)を無効にし、利息制限法の水準まで引き下げる改正貸金業法も成立。国や自治体が債務者対策を本格化したことで相談が増えた。

 中でも近畿2府4県の伸びは目立つ。国民生活センターによると、07年度の相談は全国で8万8634件。うち1割に当たる9530件を近畿分が占めた(7月11日までの集計)。前年度と比べ20.2%増えており、同10.8%増の全国と比べ10ポイント近く高い。金融庁がまとめた都道府県別の件数(07年10月―08年3月)も、兵庫県が3位、大阪府が6位に入るなど多かった。


 考えられる要因の1つは、消費者金融の多さだ。例えば大阪府に登録している貸金業者の数は835社(08年3月末)で、都道府県別では東京都の2112社に次ぐ規模。人口1万人当たりの数も、近畿地方は0.8社と、7地域中で九州・沖縄地方(1.1社)の次に多い。

 借入先を探すのが容易で便利な半面、負債が膨らみやすい。大阪府では、個人破産の発生状況などから、5社以上から借り入れのある多重債務者のうち1割程度(約13万人)を府民が占めるとみている。

 危機感を深めた自治体が、相談窓口の拡充や広報に力を入れ始めたことも見逃せない。大阪府では、2月に弁護士の橋下徹知事が就任。「相談に来て不利になることはない。必ず解決する」と積極的に呼びかけるようになった。


 8月24日、31日には、府内30カ所で初めて日曜日に無料相談会を開く。「平日は時間が取りにくい会社員などに来てもらう」(貸金業対策課)のが狙いだ。兵庫県も全国トップ水準の相談員数を確保するなど、救済に力を入れている。近畿財務局も4月から、大阪市の同局内のほか京都市と神戸市の財務事務所に相談員を置いた。

 ただ、これで問題が収束に向かうかどうかは不透明だ。相談者が多い大阪府でも、「多重債務者の8割はまだ来ていない」とみる。金融庁は5社以上から借り入れがある多重債務者の数は減り始めたと推計しているが、「1―2社から借りている債務者からの相談は増えている」(京都府消費生活安全センター)。

 行政が窓口になる限界も見えてきた。無料相談などを手がける「大阪いちょうの会」(大阪市)によると、税金や社会保険料の滞納率が高い地域の相談者が多いという。「債務者の多くは滞納者で、役所を避ける」(川内泰雄事務局次長)ためだ。弁護士会や司法書士会も無料相談をしているが、「費用を払えないのではと専門家への相談をためらう例が多い」(同)。

 ただ、無料相談の看板で債務者を引き付け、相場より高めの手数料を取る団体や弁護士・司法書士も出てきたといい、公的機関の役割は大きい。支援内容などを具体的に伝える努力が必要になりそうだ。
(大阪経済部 松林薫)
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