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医療再生への道探る―医療制度研究会

 医療従事者らでつくるNPO法人(特定非営利活動法人)「医療制度研究会」(理事長・中澤堅次栃木県済生会宇都宮病院院長)は8月9日、東京都内で「医療崩壊から再生への模索」をテーマにパネルディスカッションを開催。全国から医療関係者約120人が参加した。

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 パネルディスカッションでは、本田宏埼玉県済生会栗橋病院副院長、松原要一鶴岡市立荘内病院院長、森田茂穂帝京大医学部麻酔科教授の3人が持論を展開した。

 本田氏は、医師不足と医療事故の関係を過去にさかのぼって説明。「日本の医師の数は26万人だが、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均に合わせるなら38万人が必要」と、医師増員の必要性を説いた。その一方で、「心配なのは学生と研修医で、これだけ現場が崩壊しているのを見て意欲を失わないか。医者でも自分の子どもに医者の道を歩ませたいと考えるだろうか」と語った。
 また、「医療界が大同団結する必要があり、医療崩壊を食い止めるのは、国民皆の社会的責任。このままでは医療ばかりか、日本が崩壊してしまう」と訴えた。

 松原氏は、「地域医療崩壊を防ぐための地方自治体病院の模索」をテーマに、院長を務める鶴岡市立荘内病院(山形県)の現況を報告した。
 同院は2003年7月の新病院の移転・開院を契機に、電子カルテを中心とした統合医療情報システムを導入。各部門がそれぞれIT化に取り組み、情報の共有で院内の業務を軽減したという。従来の事務作業を徹底的に見直すことで、職員が本来の仕事に集中しやすい環境を整え、事務の業務委託も進めた。
 同院は、鶴岡市南部の救急医療体制をカバーし、救急患者をすべて受け入れるなど、入院と救急医療へのシフトを進めている。オンコール体制の中で、当直は年9回程度と過重労働にならないようにしている。ただ、今のところは職員不足に対応できているとするが、危機感は消えないという。
 松原氏は「医療は本来地域のもの。地域全体を考えた医療が必要で、地域の各医療機関が連携し、共同で行うべきもの」と説いた。

 森田氏は、日本と米国の医療事故を比較。米国で医療事故が起きた場合、民事事件として扱われることが多いが、日本では刑事事件にまで至るケースが増えていることについて、「医療界として自立的な懲戒の仕組みがうまく働かず、公的権威に依存する傾向などが後押ししてきた結果」とみている。
 また、「医療の現場は多様性に富み、限られた時間の中で対応し、未知の部分を進むが、後になってよい方法が見えてくることもある。法的な判断は法律と過去の判例から比較・検討する視点を持っており、性格が異なる」と説明。一度判断が下されると、判例として将来もその効果が持続することも指摘した。
 その上で、「互いに性格の異なる法曹界と医療界が見識を交え、連携していくことが重要で、世界に目を向けて医療関連産業を育成できる可能性もある」との見解を示した。

 質疑応答では、会場から「日本の医療はもっと世界で通用するのでは」との意見が出た。これに対し、森田氏は「米国の医療と比べ、日本が劣っているということはない。医療関連産業の育成など新たなモデルができれば、国益につながると思う」とコメント。本田氏は「医療で国際貢献すればいいのではないか。日本が高齢化にどう対応するか、世界も注目している」と述べた。


更新:2008/08/11 22:19   キャリアブレイン


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