【コラム】もし離於島で韓中間の海洋紛争が起きたら
中国は昨年、韓国が運営している「離於島総合海洋科学基地」に対し、海上哨戒機などにより5回にわたって監視活動を繰り広げた。また今月27日には中国内で韓国の海洋基地を撤去させて離於島を中国領として確保することを求める民間団体が発足したとの外信報道があった。
離於島については、もうずいぶん前から多くの専門家が、尖閣諸島や独島(日本名竹島)などに続き、韓中日3カ国間の海洋紛争が発生する可能性が高いと指摘してきた。もしも離於島で突発的な海洋紛争が発生し、軍艦が緊急出動しなければならないような状況になれば、どのような事態が予想されるのだろうか。
現在済州道に配置されている海軍の艦艇は延坪海戦や西海交戦の際に出動した150トン級の小型高速艇数隻がすべてだ。紛争時に中国海軍の艦艇に対応するためには鎮海や釜山から1000トン級以上の大型艦艇を派遣しなければならない。鎮海から10ノット(時速18.5キロ)の速度で移動した場合、離於島に到着するまで25時間を要する。
一方、軍港のある中国の上海からは18時間、日本の佐世保からは21時間で到着する。韓国の艦艇が鎮海から到着するよりも4‐7時間少なくてすむ。しかし、韓国の艦艇がもしも済州道の南側から出発するなら、所用時間は8時間半となり、かなりの時間短縮になる。そこで海軍は現在、済州島の南側の海域における海洋紛争を念頭に、韓国経済の生命線である海路を保護するための済州海軍基地の建設を推進している。
現在、済州島の南側海域を通る海路を通じて韓国の戦略物資の多くが運搬されており、原油の99.8%、穀物や原資材の100%がこのルートに依存している。韓国経済の特性を考えると、15日以上にわたって海路が封鎖されれば、国家経済は破たんしてしまう。また済州島の南側の海域は石油や天然ガスなど約230種の海底資源が存在する資源の宝庫でもある。そのためこの海域における持続的な監視と保護が必要となる。
軍では来年から2011年までの5年間で済州海軍基地の建設に8000億ウォン(約1000億円)余りの予算を投入するとしている。基地が完成すれば、イージス艦、大型上陸艦(LPX)、国産駆逐艦、潜水艦、軍需支援鑑など約20隻の艦艇で構成された艦隊が待機することになる。
しかし済州海軍基地を建設するまでに解決しなければならない課題がまだ数多く残っている。この計画は13年前から推進されてきたものの、3‐4年前から建設地域で反対の動きが本格化し、意見の対立から事業計画の遅れが目立っている。そして反対の立場からは「平和の島というイメージにそぐわない」、「北東アジアで紛争が発生した際、米軍基地に転用されたりミサイル防衛(MD)体制に編入されたりする可能性がある」、「経済的な波及効果がない」といった主張が上がっている。
これについて海軍は「シドニーなどの“世界3大美港”にも軍港はある」「MD体制とは無関係」「基地が完成すれば年間2500億ウォン(約300億円)の経済波及効果が予想される」と反論している。
こうした論議が激しさを増しているにもかかわらず、安保政策の最高機関である国防部を始め、政府の動きは鈍い。国家戦略における済州海軍基地の重要性を考えれば、今こそ中央政府が責任を持って対処すべき時ではないか。政府は、空軍に丸投げして解決を後回しにしたため米国側の強い不満を買い、結局は経済的に大きな負担を負うことになった直島射撃場問題の教訓を思い出すべきだ。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者
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